Growwwth Noteは、SaaS / サブスクリプションの事業成長を目指す、
すべてのビジネスパーソンのためのカスタマーサクセスメディアです。

  1. Growwwth Note
  2. カスタマーサクセス基本
  3. 【基礎編】PLG/SLGとは?それぞれの違いや、推進する上でのポイントなど徹底解説

【基礎編】PLG/SLGとは?それぞれの違いや、推進する上でのポイントなど徹底解説

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【基礎編】PLG/SLGとは?それぞれの違いや、推進する上でのポイントなど徹底解説

近年、SaaSをはじめとしたサブスクリプションビジネスが急激な成長を遂げています。同時にプロダクト・レッド・グロース(Product-Led Growth)こと「PLG」、セールス・レッド・グロース(Sales-Led Growth)の略称である「SLG」という言葉にも注目が集まるようになってきました。

 

SaaS/サブスクリプションを事業として成長・成功させるには、PLGとSLGを正しく理解し、適切に自分たちの製品・サービス(ここ以降では総称して「プロダクト」)に「戦略」として取り入れていく必要があります。

 

本記事では、PLGとSLGの意味やそれぞれの違いや、推進する上で留意すべきポイントなどを詳しく解説します

 

PLGとは?プロダクト主導の成長モデル


PLGは、正式名称を「プロダクト・レッド・グロース(Product-Led Growth)」といい、日本語では「プロダクト主導の成長」と訳されます。

 

顧客の取り込みやサービスの提供・運用を「プロダクトそのもの主導」ですすめる戦略です。使用方法や活用提案は、基本的にプロダクトの管理画面やブランドサイトを、顧客に「参照」してもらう形で実行します。プロダクトを「知る」「使う」「活用する」のすべてをプロダクト自身と顧客の間で完結させる必要があるため、事前の機能的作り込みと顧客の利用状況や要望を適切に収集できるようにするための仕組み構築が重要になります。



PLGを選ぶプロダクトはフリーミアムが多いのも特徴です。まずは無料トライアルでプロダクトの基本的な機能を使ってもらい、満足してもらった上で、より充実した機能が利用できる有料サービスへの移行を狙います。最初に無料で利用開始するときも、有料への移行も基本的に顧客自身で行う形になりますので、そもそも多くの説明を必要としない、テックタッチ(*)なプロダクトがPLGでの成長を目指すケースが多いといえるでしょう。

 

*「テックタッチ」について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

【総集編】初心者必見!!カスタマーサクセスのタッチモデルとは?特徴や活用方法を徹底解説



プロダクトそのものがセールスアピールやカスタマーサポート/サクセスをおこなうため、人が介在する機会の少なさが特徴のひとつです。ユーザーの傾向を分析し、適した広告や情報の表示でアップセル/クロスセルに誘導する行為も、プロダクトそのものが実行することになります


SLGとは?


PLGとよく比較される戦略にSLG(Sales-Led Growth、セールス・レッド・グロース)があります。SLGは、営業担当者、すなわち「人」が製品やサービスをアピールし、購入につなげていく方法です。いわば「営業主導の成長」です。

 

・PLG…プロダクトがプロダクト自身の販売を促し、成長する

・SLG…営業担当者たる人がプロダクトを販売し、成長する

 

PLGとSLGの大きな違いはこの点にあり、プロダクトの特性によって適した戦略の選択が求められます。



 

PLGとSLGが注目される理由とは?

PLG/SLGは、どのようにプロダクトを成長させるかを決めるための戦略です。プロダクトが単機能で低単価であれば、販売に人的リソースをかけすぎると、利益が見込めません。こういった場合は、PLGを選ぶのが妥当です。一方、高機能で複雑、その分契約あたりの単価は大きいというプロダクトの場合、顧客が機能の有効性を理解して契約しようというマインドになるには、人を介した説明がどうしても必要になります。こちらのケースでは、SLGを選ぶのが適切といえます。

要するに、プロダクトの特性によって、PLGを選ぶかSLGで売っていくのかの大筋は決まってくるわけです。シンプルで、使用による効用が分かりやすいプロダクトは、気軽に無料トライアルしてもらい、顧客側で自発的にプロダクトの有効性を理解し、有料契約へと進んでもらうことをまずは目指すべきであり、特別な根拠なく、人的リソースをかけるSLGを選ぶことは成功可能性を下げることになります。逆に、顧客の状況や環境に合わせてカスタマイズしないと利用することすら難しいようなプロダクトを、Webマーケティング等の「見てください/読んでください」という活動だけで理解してもらうことは至難のわざといえます。積極的に営業担当者が販売に介入するSLGではじめるのが得策です。

このように、プロダクトの特性と販売戦略を整合させていく上で、PLGとSLGを理解し、適切に選択することが、とりわけSaaS/サブスクリプションの世界では重要であるため、昨今注目されるようになってきていると考えられます




PLG/SLGそれぞれで踏まえるべきポイント

 

PLGで踏まえるべきポイント


 

直感的に使えるUIが必須

これまで見てきた通り、PLGの販売に人が介在することは極めて少ないといえます。これは、プロダクトそのもの以外にその使用方法を説明してくれる存在はないということです。「触れてみれば、使い方は自然に分かる」というのがPLGで事業推進するプロダクトが担保すべき要件となりますので、リリース前のα版、β版段階で一定数以上のユーザーフィードバックを集め、使い心地に反映させておくなど、一般市場の目に触れる前にある程度完成度を高めておくことが重要であり、その分事前コストがかかることを頭に置いておくべきです

 

 

カスタマーマーケティング(*1)向けの豊富なコンテンツを充実させる

「既存顧客向け」のマーケティングを意味する「カスタマーマーケティング」は、一般的にはアップセル/クロスセル(*2)を実現することが最終目的ですが、PLGの推進においては、無料トライアルから有料へと誘導するスキームが常套手段であるため、課金前の「無料使用顧客」を多数抱え込むことになります。よって、トライアル段階でプロダクトの価値を体感してもらうための、「基本的な機能を使いこなしてもらう」、「よくある質問に回答し、顧客の不満や疑問を解消する」といった、「利用定着」に向けたコンテンツも取り揃えておくことがミッションに含まれます。人を介しての補足や説明ができないとなると、自身で情報を取りに来てもらう以外、顧客がプロダクトに対する理解を深める手段はありません。そのためには「調べれば出てくる」情報をふんだんに取り揃えておく必要があります。よって、ここにも相応の制作期間とコストがかかることを念頭に事業を推進することが求められます。前述のプロダクトそのもの同様に、周辺コンテンツの準備にも「時間とお金」が初期費用としてかかるのがPLG型プロダクトであり、省エネ運用ができる、すべきなのはリリース後ということを忘れてはなりません。

*1「カスタマーマーケティング」について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

【基礎編】今注目のカスタマーマーケティングとは?カスタマーサクセスとの違いや具体的施策を解説

*2「アップセル/クロスセル」について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

【総集編】「アップセル・クロスセル」それぞれの意味と違い、施策例|メリットや成功させるポイントも解説

 

 

SLGで踏まえるべきポイント



「人」への投資を惜しまない

PLGとは対極的に、販売活動を担うのが「人」であるSLGにおいて、提案時のプレゼンテーションの質は、成長を目指す上での生命線になります。どれだけ素晴らしい機能を有するプロダクトであっても、利活用する上で「人による説明」が不可欠であるものならば、その説明もプロダクトの一部であると理解すべきです。また、SLG型のプロダクトは、営業部門や経理部門、マーケティング・クリエイティブ部門といった、それぞれの職種に特化した機能を提供するものが多いため、(プロダクトの)営業担当者は、自社のプロダクトに関する知識のみならず、提供先の顧客が業務上備えている「職種的リテラシー」を十分なレベルで保持していることが求められます。このような要件を満たす人材は、一定以上の報酬なくして集めることはできません。「人もプロダクトの一部」ということを忘れずに、「人」への投資を惜しまない覚悟と準備が必要です


営業活動の「標準化」が実現できる環境を整える

優秀な人材(営業担当者)の確保がSLG推進の必須要素ではあるものの、それぞれの活動が属人的になってしまうと、いずれは販売成績に乖離が発生し、安定的な成長は望めなくなります。プレゼンテーションに長けた人材は、とかく自己流を押し出しがちです。プロダクトの目玉といえる機能を魅力的に訴求することで、成約を勝ちとることは重要ですが、プロダクトが有する機能すべてを余すことなく伝えることや、出来ないことに関する注意喚起などを怠れば、顧客の怒りを買うことも起こりえます。絶対に伝えるべきこと、過剰に伝えてはならないことなど、訴求ポイントのルール化が、SLG推進における中長期的な鍵となります。

 

ルールの設定同様もしくはそれ以上に重要なのが、販売商談や都度のコミュニケーション時における取得情報の蓄積と分析です。ルールに基づいて活動することを義務付け、それが正しく実行されたとしも、活動によって得られた情報を入力する環境がなければ、本当にルールが遵守されているかどうかも分かりません。営業担当者が「適切に活動した」ことが可視化されるよう、情報の入力先(CRM/SFA等)を整備し、入力された情報がなるべく定量的に分析できるような環境設計を目指してください

 



PLG/SLGを導入・成功させた事例

 

実際にPLG/SLGを導入し、成功させた企業についてご紹介します

 

PLGの事例



Zoom

いまや世界で知らない人はいないと言っても過言ではない企業です。シンプルで分かりやすいプロダクトの設計・開発に注力し、PLGによる成功を勝ち取りました。

 

無料で使える通話は品質が良く、最大40分まで利用が可能。ソフトウェアに詳しくなくても使いやすいシンプルな構造とあわせ、多くのユーザーに利便性を実感させました。結果として有料サービスへのアップグレードを望むユーザーが増加しています。PLGの導入で大成功をおさめた好例だと言えるでしょう

 

 

Slack

Slackは大々的なプロモーションをおこなわず、ユーザー間の口コミによって広がったプロダクトです。ビジネスツールとしての機能が充実していたことがユーザーの心をつかみ、大きな評判を獲得しました。

 

無料で使える機能は高性能で分かりやすく、マニュアルも充実。しかし、便利ではあるものの、無料プランの宿命として機能制限がついています。

 

機能の利便性を実感したユーザーたちは制限の撤廃を望み、やがて自然に有料サービスへとアップグレードするようになりました。プロダクトの優秀性がPLGの成功を導いたのです

 

 

SLGの事例



Salesforce

世界で最も成功したSaaS企業としても、The Model(ザ・モデル)(*)の生みの親としても、知らない人はいないと思われるSFA/CRMプロバイダーであるSalesforceは、サービスの完成度やカバー範囲の広さだけでなく、確固たるセールス手法を確立していることでも有名です。

 

日本国内ローンチから数年間、同社は積極的に代理店を開拓し、自社リソースだけに頼らない営業体制を構築してきました。しかし、近年代理店の開拓活動は縮小し、自社セールスでの契約獲得にシフトしています。Salesforce規模の事業において、自社リソースだけに依存することは、固定費の観点でも、成長速度の観点でも多少の懸念が起こりそうですが、ここにSalesforceならではの成長戦略を描いています。彼らは、営業代理店の開拓活動を縮小させる代わりに、「コンサルティングパートナー」の開拓を広げはじめたのです。

 

コンサルティングパートナーとは、Salesforceの新規導入企業に対し「定着化支援」を提供する企業を指し、その業態の多くは「営業代理店/営業代行会社」になります。「従来の営業代理店」との取り組みとどう違うのか、混乱しそうになりますが、実はその違いはシンプルで、

 

「従来の営業代理店」には「契約獲得までを営業代理」してもらう

「コンサルティングパートナー」には「契約獲得後」の「定着化支援」を代理してもらう

 

要するに、契約獲得後の「カスタマーサクセス活動」を任せられるパートナーの開拓を進めているということです。

 

Salesforceが提供する機能は、いわずと知れた「SFA/CRM」です。導入先である顧客は、精力的に営業活動を行い、Salesforceを使いこなしている企業でしかありません。ということは、彼らのサービスを導入している全顧客が、定着化支援に必要なスキル・ノウハウを有する、有力なコンサルティングパートナー候補となります。既知の関係値が築けているところからの開拓行為ですので、高い費用対効果が期待できることは言うまでもありません。

 

コンサルティングパートナーに「(ハイタッチ領域の)カスタマーサクセス活動」を任せることができれば、圧倒的な工数削減が実現し、自社セールスにリソースを集中させ、直接契約顧客を増やすことが可能になるわけです。

 

しかし、それだけでなく、Saleforce未導入の企業に対する新規営業活動においても、このコンサルティングパートナーのスキームは威力を発揮しています。

 

「SFA/CRM」は、領域としてはかなり成熟しており、Saelsforce強しとはいえ、多数の競合とそれに紐づく競合ユーザーが存在しています。これは、Salesforceに限らず、「SFA/CRM」の導入提案は、ほとんどの場合「リプレイス提案」になるということです。日々利用するツールである「SFA/CRM」は、時間が経つにつれてユーザーごとのカスタマイズが加わり、使い心地への定着化も進みます。そんな「使い慣れた、日々使うツール」を切り替えてもらうことは容易ではありません。言い換えると、機能や性能だけを訴求しても、簡単にリプレイスはできないということになります。

 

Saleforceはここに「コンサルティングパートナーとして参画する」ことを提案として加えるのです。機能/性能による業務効率化(のさらなる促進)メリットの訴求だけでは動かない提案先に対し「導入し、使いこなし、コンサルティングパートナーになる」ことで得られる「ビジネス的メリット」を訴えるわけです。コンサルティングパートナーが提供するサービスは、多くが、「プロフェッショナルサービス」と呼ばれる有償の定着化支援です。しかも、その支援先顧客はSalesforceが紹介してくれ、営業コストもかかりません。

 

通常は「コスト」にしかならないツール導入が、「プロフィット」につながるという提案なわけですから、魅力的な話であることに間違いはありません。

 

すでに成功者になっていたSalesforceが、それに甘んじず、自社のインフラ、顧客をいい意味で「フル活用」し、社外にまでおよぶ「人」のネットワークを構築し、成長を遂げているこのケースは、SLGでも、カスタマーサクセスという広いテーマの中でも参考にすべき事例といえます。

 

*「The Model(ザ・モデル)」について詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

The Model(ザ・モデル)とは?売上アップに効果的な理由や運用方法を解説

 

 

 

まとめ

今回はPLGとSLGにスポットあてた内容でしたが、実は「CLG = カスタマー・レッド・グロース(Customer-Led Growth)」という新たな概念にも注目が集まってきています。「顧客主導による成長」という意味になりますが、プロダクトの成長ドライバーを「顧客である」と定義し、組織や活動を設計・運用していく考え方です。顧客による中長期的な継続利用が前提となるSaaS / サブスクリプション型のプロダクトにおいて、今後欠かせないキーワードになりますので、次回以降の記事で詳しく紹介いたします

 

 



松本 隼陽

執筆者情報:

松本 隼陽(まつもと じゅんや)

2018年にBtoCスタートップ企業に入社後、訪問営業を経験。
2019年にエンジニアリング会社へ転職し、開発・運用保守・サポートの現場を経験。
その後、2022年に株式会社ユニリタに転職し、カスタマーサクセスチームのリーダーとして、オンボーディング支援やセミナー講師を担当するなど日々奮闘中。


『Growwwing 』サービス資料を無料でダウンロード

『Growwwing 』サービス資料を無料でダウンロード

LTV最大化のためのカスタマーサクセスプラットフォーム『Growwwing グローウィング』のサービス資料を無料でダウンロードいただけます。
『Growwwing グローウィング 』は、解約防止とネガティブチャーンを達成する顧客管理が実現。Salesforceとの相性は全ツールNo.1です。

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連キーワード

お役立ち情報

“取材・記事掲載
無料キャンペーン”中

“貴社のカスタマーサクセス実践体験を無料でPRしてみませんか?
これからカスタマーサクセスを始める方へのヒントになり、
勇気を与える貴社の物語を聞かせてください”