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【基礎編】そのSaaS、ちゃんと使われていますか?今こそ知るべきデジタルアダプション

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【基礎編】そのSaaS、ちゃんと使われていますか?今こそ知るべきデジタルアダプション

 





なぜ「デジタルアダプション」が今、あらためて注目されているのか?


近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)が企業戦略の中心に据えられるようになり、SaaSをはじめとした各種クラウドツールの導入が進んでいます。CRM、ERP、MA(マーケティングオートメーション)、グループウェア、チャットツールなど、導入事例は枚挙にいとまがありません。
しかし、それらのツールが本来の効果を発揮している企業は、果たしてどれほどあるでしょうか。
たとえば、以下のような悩みは多くの現場で見られます。

・「導入はしたが、現場が使いこなせていない」
・「一部の社員しか使っておらず、属人化が進んでいる」
・「レポートやKPIの活用がされておらず、経営判断に活かせない
・「現場から“使いにくい”“前の方が楽だった”という不満が出ている」


こうした課題に共通するのは、「ツールを導入しただけ」で止まってしまっているという点です。
ここで重要となる概念が、「デジタルアダプション(Digital Adoption)」です。これは単なる“導入”ではなく、ユーザーがツールを正しく理解し、業務の中で自然に使いこなす状態を目指すものです。
言い換えれば、「ツールを導入して成果を出す」までの道のりをマネジメントする考え方が、デジタルアダプションなのです。



 

3つのキーワードで読み解くデジタルアダプションの本質とは?

 

デジタルアダプションという言葉はまだ日本ではなじみが薄いかもしれませんが、その本質は非常に実践的で、企業活動の根幹にも関わるものです。ここでは、その理解を深めるために、3つのキーワードに分けて解説します。


1.「使われる」ではなく「使いこなす」

どんなに高機能なツールでも、ユーザーが機能を理解していなければ宝の持ち腐れです。たとえば、MAツールにおけるスコアリングやセグメント設計、CRMでのパイプライン管理、BIツールでの可視化など、「高度なことをしなくても基本をきちんと使えば十分な価値がある」ものばかりです。
逆にいえば、「基本機能を日々の業務で自然に使えるようになる」ことこそ、デジタルアダプションの第一歩です。

 

2.テクノロジーと人をつなぐ“橋渡し”

アダプションは、IT部門の仕事ではありません。業務部門、現場のマネージャー、人材開発部門、経営層、そしてITの連携があってこそ成立します。ツールを業務に溶け込ませるには、使う人間の理解・納得・習慣化が不可欠なのです。

 

3.「成果に結びつく活用状態」をつくる

デジタルアダプションの究極の目的は、業務や事業の成果です。つまり、「誰が、何を目的に、どの機能をどう使うと、どんな効果があるか」を具体的に描く必要があります。
たとえば、営業部門にCRMを導入する場合、「商談の登録率を90%にする」「案件の平均成約期間を3日短縮する」など、業務KPIに落とし込むことで、アダプションの成果が見えるようになります。




よくある失敗とその背景―なぜツールが使われないのか?

 

多くの企業がデジタルツールの導入に力を入れているにもかかわらず、実際の現場でツールが活用されずに形骸化してしまう例は後を絶ちません。その背景には、いくつかの共通した落とし穴があります。

まず、よく見られるのが「導入ありき」でプロジェクトが進められてしまうケースです。他社も導入しているから、あるいは経営層のトップダウンで“とりあえず”導入することになったという背景では、現場の納得や理解が得られないままスタートしてしまいます。現場の従業員からすると、「なぜこのツールを使うのか」「自分たちの業務にどう役立つのか」が見えていない状態で、新たなシステムへの対応を求められることになります。その結果、使い方がわからないまま放置されたり、最初から抵抗感を持たれたりすることになります。

次に、導入後の教育やトレーニングが不十分であることも大きな要因です。多くの企業では、導入初期に1度きりの操作説明会を開くだけで、その後のフォローアップや継続的な学習支援が用意されていないことがあります。ツールは使えば慣れるという発想があるかもしれませんが、実際には使い始めの段階で適切なサポートがなければ、ユーザーはストレスを感じて使わなくなってしまうのです。新しい操作やUIに慣れるまでには、時間と経験が必要です。これはどんなに優れたツールであっても同じことが言えます。

また、マネジメント層の関与が弱い場合も、ツール活用の浸透を妨げる要因となります。現場だけに任せきりで、管理職や経営層が実際に使っておらず、「使いなさい」と言うだけでは説得力に欠けます。逆に、マネージャー自らがツールを活用して業務を改善している姿を見せれば、現場も「これは自分たちにとっても意味のあるものだ」と感じ、積極的に使うようになります。つまり、アダプションはトップダウンとボトムアップの両方が必要なのです。

さらに、ツールの活用が実際にどのような効果をもたらしているのかが見えないと、ユーザーのモチベーションはなかなか上がりません。使った結果、業務が効率化された、ミスが減った、顧客満足度が上がった、といった成果が可視化されて初めて、「使ってよかった」「もっと活用しよう」という意識が育ちます。逆に、こうした効果が数値として示されないままでは、「面倒なだけのツール」として敬遠されてしまうのです。

このように、導入目的の曖昧さ、教育の不足、マネジメントの関与欠如、効果の不透明さといった要因が重なることで、ツールは本来の価値を発揮する前に「使われなくなる」状態に陥ってしまいます。デジタルアダプションを成功させるには、これらの障害をひとつずつ丁寧に取り除いていく姿勢が欠かせません。ツールそのものの良し悪しだけではなく、「いかに使われるか」に対する設計と仕組みづくりが、成功の鍵を握っているのです。




デジタルアダプションを進めるための実践フロー


それでは、どのようにしてデジタルアダプションを推進していけばよいのでしょうか。ここでは、基本の流れを6つのステップに分けて解説します。


ステップ1:目的とビジョンを明確にする

まずは、「なぜこのツールを導入するのか」「どんな成果を期待しているのか」を経営・現場レベルで明文化します。定量目標(例:処理工数30%削減)と定性目標(例:業務の質的改善)をセットでもうけましょう。

 

ステップ2:活用シナリオとKPIの設計

ユーザーの立場に立ち、具体的な活用シーンを描きます。営業なら「訪問記録入力」「商談フェーズ管理」、人事なら「入退社処理」「研修履歴管理」など、実業務に即したシナリオを設計し、それぞれにKPIをひもづけます。


ステップ3:トレーニングとオンボーディングの強化

「教えたつもり」ではなく「理解されたか」を重視したトレーニング設計が重要です。マニュアルだけでなく、動画・チュートリアル・Q&Aチャットなど、複数の手段を用意しましょう。

 

ステップ4:定着支援と現場フォロー

導入初期は特に「困ったときにすぐ聞ける仕組み」が大事です。オンボーディングの成功率は、質問対応の質に左右されます。可能であればスーパーユーザー制度(社内エキスパート)を設け、現場フォロー体制を構築しましょう。

ステップ5:成果の可視化とフィードバック

定着状況や効果の進捗はダッシュボードなどで共有し、社内で透明化します。「やったことが数字に反映される」ことを見せることが、さらなる活用意欲につながります。

ステップ6:成功事例の共有とナレッジ展開

早期に成果が出た部門やチームの事例を社内で積極的に発信しましょう。賞賛文化やナレッジの水平展開が、全社的なデジタルアダプションの加速を後押しします。




デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)という選択肢


最近では、「デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)」と呼ばれる専用ツールも注目を集めています。これは、ユーザーのツール利用をナビゲーションし、定着支援を自動化するソリューションです。

DAPの主な機能

・アプリ内ガイド(ウォークスルー)
・ポップアップによるリアルタイム支援
・利用状況分析とレポート化
・セグメントごとのガイダンス最適化
・多言語対応やマルチツール対応


DAPの導入メリット

・「説明しなくても、ツールの中で自然に学べる」体験が可能
・活用状況を可視化し、課題部門へのアプローチが容易に
・トレーニングコストの削減と効率的なサポートの実現




まとめ

かつて「IT投資=ハードウェアやシステム導入」と考えられていた時代は終わりました。これからは「導入後の使われ方」こそが、投資対効果を左右する時代です。デジタルアダプションは、技術導入の“あと”をマネジメントするという、極めて人間的な視点を持った戦略です。

企業にとっての“成長ドライバー”は、もはや技術そのものではなく、「技術を活かせる組織力」にあります。導入するだけで終わらせない。使いこなして成果を出す。そのための第一歩が、「デジタルアダプション」という考え方なのです。




佐々木 一稀

執筆者情報:

佐々木 一稀(ささき かずき)

ユニリタ自社開発のフローチャートツール「Ranabase」にて開発に携わり、カスタマーサポートを担当し2022年に「Growwwing」チームへジョイン。
カスタマーサクセスメンバーとしてオンボーディング支援業務を経験し、現在ではその知見を活かし顧客の求めてる情報を発信するためにマーケティング分野を担当。

幅広い経験からの視点を生かし、カスタマーサクセスを行う方へのヒントとなるような記事を掲載できるよう全力で頑張ります。

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