【基礎編】リテンションとは?カスタマーサクセスにおける重要性について解説

「リテンションについて詳しく知りたい」
「リテンションがカスタマーサクセスで重要な理由を理解したい」
カスタマーサクセスに取り組んでいくうちに、このように「リテンション」についてより理解を深めたいと考えるようになった方もいるのではないでしょうか。
リテンションはカスタマーサクセスにおいて重要な指標とされており、LTVにも大きな影響を与えます。正しく理解すれば、カスタマーサクセスをより効率的に運用できるようになります。
今回は、カスタマーサクセスにおける「リテンション」の重要性を詳しく解説します。リテンションレートの計算方法や数値が下がる理由、レートを高める工夫までご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
リテンションの意味とは
リテンション(retention)は、人事やマーケティングで用いられる言葉で、もともとは「維持」や「保持」を意味する英語です。
人事においてのリテンションしたい対象は「従業員」で、人材の流出防止をするための施策を意味します。対してカスタマーサクセスの領域において、リテンションしたい対象は「顧客」であり、既存顧客を維持するための施策やその結果として顧客との関係(契約)が継続すること自体を指します。
人事に関するリテンション(離職防止対策)については下記の記事をご覧ください。▼
【若手社員交流会】4つの目的別におすすめ内容と運営のコツを解説 | アーティエンス株式会社
どちらにしても、成功すると企業の安定的な成長につながることから、リテンションは重要な施策として注目されています。
それではカスタマーサクセスにおいて、リテンションはどのような意味を持つのか、詳しく見ていきましょう。
カスタマーサクセスにおけるリテンションの重要性
カスタマーサクセスは、カスタマー(顧客)をサクセス(成功)へと導くための一連の活動や役割・組織そのものを指し、その最終的な目的は顧客のLTV(Life Time Value=顧客生涯価値 を最大化させることです。
そもそもカスタマーサクセスは、サブスクリプションなどのリテンションモデルにビジネスが大きくシフトするのにあわせて注目されるようになった比較的新しい取り組みです。
リテンションモデルは、顧客に継続的に経験やサービスを提供するビジネスモデルを指します。顧客は製品やサービスそのものではなく、「利用」に対して料金を支払うことが特徴であり、SaaSをはじめとするサブスクリプションは、リテンションモデルの代表的なビジネスモデルといえます。
従来の買い切り型のビジネスモデルでは、顧客のLTVは製品やサービスを購入して所有した時点で最大となるOTV(One Time Value=ワンタイムバリュー)でした。購入するまでが勝負であり、購入後は顧客維持に力を入れる必要性はさほど高くなかったのです。
しかしリテンションモデルにおいては、顧客が自社プロダクトを購入した時点ではCAC(Customer Acquisition Cost=顧客獲得単価。1人の顧客を獲得するにあたりかけた費用)を回収できないのが一般的です。契約に至った顧客をできるだけ長く維持し、LTVがCACを上回るようにならなければ、リテンションモデルの事業は利益を出せません。
顧客に自社プロダクトの良さを理解してもらい、長く使い続けてもらうための取り組みのひとつがカスタマーサクセスです。どれだけの顧客をリテンションできるかは、カスタマーサクセスの取り組みが成功しているかを測る重要な指標となるのです。
リテンションマーケティングも重要な活動のひとつ
既存顧客との良好な関係性を維持してリテンションを促進させる施策のひとつに、「リテンションマーケティング」があります。
新規顧客の獲得は、既存顧客を維持するよりも5倍のコストがかかるとされることから、既存顧客にリピート購入してもらい、さらにアップセルやクロスセルを促してLTVを最大化させることを目指すのが、リテンションマーケティングの目的です。
リテンションマーケティングでは、顧客に関するデータ全般を参照・活用し、彼らが利用している製品やサービスに関する情報を継続的に発信したり、限定のキャンペーンを実施したりすることで、顧客維持に努めます。
カスタマーサクセスにおいても、リテンションマーケティングは重要な取り組みとされています。顧客を成功に導きLTVを最大化させるには、顧客をリテンションさせる必要があるためです。
ただし、自社目線の「(契約/利用)継続」よりも、顧客目線の「成功」を主眼に置き、結果として自社の成功を目指すカスタマーサクセスでは、顧客をリテンションさせる施策はもちろん、オンボーディングコンテンツの充実化や、利用定着前の顧客が参照できるFAQの完備なども包含した上で、既存顧客向けのマーケティング活動全般を「カスタマーマーケティング」と呼ぶのが一般的です。
カスタマーマーケティングは、顧客との定期・個別商談や、顧客ごとに綿密に内容を組み替えるオンボーディングなどのハイタッチ活動とは対照的に、おもにはコンテンツを揃えてWEB掲載したり、その案内を顧客アクションに応じて自動配信メールで提供するといった、テックタッチな活動を中心に顧客のリテンションを目指します。
リテンションレート(リテンション率)とは
リテンションレートとは、一定期間内に再びサービスを利用した顧客の割合を指します。日本語では「定着率」や「継続率」と訳されます。リテンションレートは、カスタマーサクセスにおいては継続的に測定するべきKPIとなる重要な指標です。
リテンションレート(リテンション率)の算出方法
リテンションレートは、以下の計算式を用いて算出します。
リテンション率=継続顧客数÷新規顧客数×100(%)
例えばある月に獲得した新規顧客が120人で、翌月も利用を継続した顧客が90人であれば、「90÷120×100=75」と計算し、1か月後のリテンション率は75%になります。
それからさらに2か月が経過し、継続した顧客が45人になった場合、「45÷120×100=37.5」となり、3か月後のリテンション率は37.5%であるとわかります。
このように、リテンションレートが高いほど、顧客を維持できていることになります。
リテンションレートの重要性とLTVへの影響

リテンションレートが重要とされるのには、さまざまな理由があります。
例えばリテンションレートを把握できれば、新規獲得した顧客が、将来的にどれくらいの期間継続利用するか予測できるようになります。そうすれば、新規顧客を獲得するのにかけるコストが適切なのかを判断することも可能です。
しかしリテンションレートが重要とされるもっとも大きな理由は、数値を高めることにより効率的・安定的に売上を向上できることです。前述したとおり、新規顧客の獲得には、既存顧客を維持するよりも5倍のコストがかかるといわれています。既存顧客をリテンションさせれば、コストを抑えて業績を延ばせることはメリットです。
そもそもリテンションモデルでは、顧客が継続的に利用しなければビジネスとして成り立ちません。前述しましたが、リテンションモデルでは、少なくともCACを上回るだけのLTVになるまで顧客に継続してもらわなければ赤字になるためです。
LTVにはいろいろな算出方法がありますが、SaaSなどサブスクリプション型ビジネスでよく用いられるのは以下の計算式です。
LTV=ARPA(Average Revenue per Account=1アカウントあたりの平均単価)÷チャーンレート(解約率)
リテンションレートが下がる理由と上げるための工夫

製品やサービスのリテンションレートが下がるのには、必ず何か理由があります。
基本的に、サービスの費用が問題となり離脱に至るケースはさほど多くありません。顧客は購入に至る段階で、価格についてはいったん納得しているためです。価格を理由として挙げた顧客も、価格そのものが不満なのではなく、「価格に見合う価値を得られなかった」と感じて離脱したと考えるのが妥当です。
少し古いデータですが、米国テキサス州に本社を置くソフトウェア会社オラクル社が行った調査では、以下のような結果が判明しています。
- ・86%のカスタマーは、より良い顧客体験のためならもっとお金を払っていいと思っている
- ・89%のカスタマーは、悪い顧客体験をしたあと競合他社に移った
(出典:オラクル社 2011 Customer Experience Impact Report)
良い顧客体験が得られなかったという顧客についても、期待したサービス 限りません。良い顧客体験を与えることができずにサービスの価値を感じてもらえなかった、つまり企業側が価値を伝えられなかったケースも多いのではないでしょうか。
顧客がサービスを利用することで解決しようとしていた課題が「解決されない」と判断されれば、顧客が離脱しリテンションレートは下がります。
そう考えると、リテンションレートを上げるためには、まずサービスに価値を感じてもらうという良い顧客体験を与えなければなりません。製品やサービスの質が良いことは当然として、提供者側にはそれを伝える工夫が必要です。
そのためには顧客が現在どのような状態にあるのかを常に把握し、不満を感じる前につまずきの芽を摘み取り、適切なタイミングでケアする必要があります。そしてそれこそが、カスタマーサクセスが担う役割なのです。
次章では、リテンションレートを上げるために、カスタマーサクセスで取り組むべき具体的な施策を紹介します。
リテンション施策
リテンションレートを高めるカスタマーサクセスの施策としては、以下のようなものがあります。
・オンボーディング
オンボーディングとは、サービスを導入したばかりの顧客に対して、機能や使い方をいちはやく理解させ、価値を感じてもらうために支援する取り組みです。
・ヘルススコアの管理
ヘルススコアとは、顧客がプロダクトやサービスを継続して使い続けてくれるかを測る指標を指します。ログイン回数やログイン人数などサービスの利用状況などを観測することで、顧客のつまずきをいち早く察知しフォローします。
・顧客ロイヤルティの向上
顧客ロイヤルティとは、顧客が製品やサービスに対して感じる「愛着」や「信頼」を指します。ロイヤルティの高い顧客はプロダクトを長く継続利用してくれるため、顧客ロイヤルティを高める施策は重要です。
これらリテンション施策について詳しくは、以下の記事をご覧ください。
「【実践】リテンション施策を成功させるためには?事例も3つ紹介」
まとめ
リテンションモデルのビジネスにおいては、リテンションレートを高めなければCACを回収できず、利益をあげることができません。カスタマーサクセスの目的はあくまで顧客を成功させることであり、カスタマーサクセスに成功すればリテンションレートは自然と上がります。つまりカスタマーサクセス自体の成果を測る指標として、リテンションレートはとても重要なものなのです。
顧客が製品やサービスから得られる顧客体験に不満を覚えてリテンションレートが下がるときにも、カスタマーサクセスを遂行することが効果的な打ち手のひとつなります。リテンション施策については、「【実践】リテンション施策を成功させるためには?事例も3つ紹介」でより詳細に解説して参ります。
リテンション施策についてさらに深く知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

執筆者情報:
松本 隼陽(まつもと じゅんや)
2018年にBtoCスタートップ企業に入社後、訪問営業を経験。 2019年にエンジニアリング会社へ転職し、開発・運用保守・サポートの現場を経験。 その後、2022年に株式会社ユニリタに転職し、カスタマーサクセスチームのリーダーとして、オンボーディング支援やセミナー講師を担当するなど日々奮闘中。
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