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【総集編】知っている人も再確認。「カスタマーサクセス」徹底理解

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【総集編】知っている人も再確認。「カスタマーサクセス」徹底理解
SaaSビジネスの市場拡大にともない、日本でも「カスタマーサクセス(Customer Success)」という言葉を耳にすることが増えてきました。しかし、その意味を正確に説明できる人は、そう多くはないと考えられます。

カスタマーサクセスとはなにか。また、その目的や活動における要点はなにかを、徹底解説します。

 

 

カスタマーサクセスという言葉の意味

カスタマーサクセスとは、「顧客の成功を達成する」ことで「自社の利益を得る」という考え方や、組織、戦略、活動を指す言葉です。SaaSにおける「活動」としてのカスタマーサクセスにスポットを当てて詳述すると、「プロダクトやサービスの利用体験を通じて顧客のビジネスを成功に導くことで、自社のビジネスを成功させること」といえます。具体的な成功体験の内容はサービスによって異なりますが、カスタマーサクセスの「成功要件」として共通するのは「顧客の事業が成長する」「顧客にとって欠かせない、代替の効かない役割を担う」といった物理的な成果です。さらに顧客へ成功体験を提供し続けることで利用も継続し、結果としてLTV(Life Time Value = 顧客生涯価値)の最大化につながるのです。

カスタマーサクセスの目的=LTV最大化

カスタマーサクセスの目的をひとことであらわすと、「LTVの最大化」になります。


LTVは「Life Time Value」の頭文字からなる略語で「ある企業との取引開始から終了までの間に、1顧客がどれだけの利益を企業にもたらすか」を表す数値です。人の一生ではなく「顧客としての生涯価値」という意味を明確にするため「Customer Lifetime Value」(CLV・CLTV)と表記される場合もあります。


サブスクリプションにおいては、「顧客がサービスに対し、契約期間中にもたらし続ける対価の合計値」がLTVとなります。これを最大化するための活動がカスタマーサクセスであり、より長い期間、より大きな単価で、より多くのアカウントを獲得することが指標となります。そのために、日々顧客とコミュニケーションをとりながら不安や不満を取り除き、要望を汲み取ってサービスに反映させ、顧客を成功に導くことで、彼らの満足度を高いレベルで保ち続けることが重要です。

カスタマーサクセスの要点



消費活動の多くが「モノ」から「コト」へとシフトするにつれ、必要なときに必要なだけ利用できるサブスクリプションサービスは、増加の一途をたどっています。カスタマーサクセスは、サブスクリプションにおいてはセールスよりも重要とさえいわれる役割・活動です。ここではその要点を解説します。

何故、カスタマーサクセスが注目されているのか?

「利用」に対価を払う「サブスクリプション」は、いまではもはや当たり前の消費活動となりました。ソフトウエアをクラウド上で提供し、固定制ないしは従量制の利用料が課金されるSaaSもその一つです。カスタマーサクセスが注目されている背景には、このSaaSビジネスの隆盛があります。


イギリスのリサーチ&アドバイザリ企業、Gartnerの発表によると世界のパブリッククラウドサービス市場の規模は、SaaSがけん引する形で大幅な拡大を続けています。2018年には2278億ドルだったものが、2020年には2575億ドルに、2022年には3622億ドルへと成長すると予測されています。SaaS市場は特に成長が顕著で、2018年は857億ドル、2020年は1014億ドル、2022年には1382億ドルとわずか4年で1.5倍以上の規模への成長が見込まれています。


消費活動の主軸が「所有」から「利用」に変わりはじめたことで、顧客は、サービスを解約することも、他のサービスへ乗り換えることも、手間なく簡単にできるようになりました。サブスクリプション提供者が利益を上げるには、顧客の状況やニーズに合わせて継続的に価値を提供し、顧客が価値に気付くような仕掛けを設け、それを伝え続ける仕組みを構築する必要があります。


その原動力となるのが、LTVの最大化を目指すカスタマーサクセスです。SaaSをはじめとするサブスクリプションサービスを提供する企業の多くが、カスタマーサクセスに注力する理由はここにあります。

サブスクリプションにおけるカスタマーサクセス活動の位置付けとは?

では、サブクスリプションにおけるカスタマーサクセス活動の位置づけを理解しておきましょう。サブスクリプションサービスの多くはWEBサービスとして提供されるため、利用者へのアプローチもWEB広告に代表されるデジタルコミュニケーションが主な手段となります。そして、ターゲットに対しデジタル上で最初にコンタクトするマーケティング以降、サブスクリプションのセールス活動は4つのフェーズに分けられます。

マーケティング

マーケティングでは、WEB広告等から自社サイトに誘導した「訪問者」の興味やニーズにマッチしたコンテンツを見せ、資料請求やサービスに対する問い合わせといったアクションを喚起し「リード(見込み客)」を獲得します。

インサイドセールス

獲得した「リード」に対して、メールや電話などで能動的にアプローチするのがインサイドセールスです。リードへのヒアリングから、顧客が求めるニーズと自社サービスの提供価値がマッチするかを見極め、商談の是非を判断します。商談に値すると認められたリードは、HOTリード(案件化顧客)として、次のフェーズへと誘導されます。

フィールドセールス

自社サービスに対するニーズがあると判断されたHOTリードに対し、提供するサービスの機能や強み、他者に対する優位性などをアピールし、トライアルや契約獲得を目指すのがフィールドセールスです。「所有」の時代では、リードがカスタマー(顧客)化するこのフェーズがセールス活動のゴールでしたが、サブスクリプションではここからが顧客との関係が始まるスタート地点です。

カスタマーサクセス

サブスクリプションを契約した顧客は、すぐにサービス利用を開始します。しかし、サービスの利用を通じて彼らのニーズが満たされなければ、すぐに解約されてしまいます。そのため、サービスの導入サポートから機能や操作に慣れてもらうところまでをカバーする「オンボーディング」、その後のさらなる活用提案や不安・不満を解消することを通じて解約を予防し、顧客からの改善要望を吸い上げ、確実にサービスエンハンスへとつなげるのがカスタマーサクセスです。サブスクリプションの収益指標であるLTV向上に直結する役割であり、かつての営業職以上に重要であるとさえいわれることもあります。

カスタマーサクセスの追加効果

カスタマーサクセス活動を通じて顧客からの信頼度を高め、提供するサービスや製品に愛着を感じてもらい、“ほかには代えがたいもの”という認識を醸成することで「ロイヤルカスタマー」へと導きます。ロイヤルカスタマーには「継続的な契約・利用」のほか、「事業・サービスに対する収益貢献度が高い」、「リファラルによる新規顧客をもたらしてくれる」などの特徴があります。これらの“追加効果”を具体的に見ていきましょう。

追加効果①:アップセル・クロスセルによる契約追加

顧客の購入単価・契約単価を高める「契約拡張」の手法がアップセル・クロスセルです。SaaSにおいて、アップセルとはサービス活用が広がり新たな課題解決を期待する顧客に、よりグレードが高いサービスを勧めること、クロスセルとは関連サービスの追加購入・追加契約を促すことです。いずれも単価が上がり、売り上げアップに貢献します。顧客がアップセル・クロスセル提案を受け入れる前提として、ロイヤルティの高さが求められます。


解約されないよう利用状況をチェックしつつヘルススコア(顧客がサービスを継続利用するかを数値化した指標)を高めた状態で、アップセル・クロスセルを行うことで、顧客の業務改善からさらなるビジネス成功が実現し、自社のカスタマーサクセスも成功を収めるのです。

追加効果②:リファラルによる新規顧客の追加

友人や知人による「口コミ」や「紹介」を「リファラル」と呼びます。社員の紹介で採用する「リファラル採用」のほうが、通常の公募採用よりも企業文化にマッチした人材に出会えるうえ定着率も高い傾向があるように、リファラル経由で契約する新規顧客は、定着率が高い傾向があります。


周囲の知り合いに対して、自分たちが愛着を持っている企業のサービスを広める「リファラルの起点」になるロイヤルカスタマーは、サブスクリプションの成長ドライバーとして重要です。人には自分が良いと思い、愛着を持っている商品やサービスを親しい人に勧めたいという心理があります。サービスへの信頼度や愛着度が高いロイヤルカスタマーは、周囲の家族や友人たち、さらにはSNSなどで不特定多数に向けて自らが利用するサービスを推奨してくれる傾向があります。


定着率の高い新規顧客をもたらしてくれる“追加効果”も、適切なカスタマーサクセス活動の賜物です。

追加効果が「LTVの最大化」を加速させる

ロイヤルカスタマーが育つことによる「アップセル・クロスセル」の実現」と、「リファラルによる新規顧客獲得」、この2つの追加効果によって「LTV最大化」の可能性はさらに高まることになります。また、この追加効果が一定以上の規模になると、解約がゼロにならずとも、収益増が継続する「ネガティブチャーン」という経営上盤石な状態になります。

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い

カスタマーサクセスと混同しやすい用語が「カスタマーサポート」です。一般的には、カスタマーサポートのほうが認知されており、カスタマーサクセスが「カスタマーサポートの一部」などと誤解されることも少なくありません。同じカスタマー向けの活動ですが両者には明確な違いがあります。それぞれのミッションと求められるスキルを軸に、違いを詳しく見ていきましょう。

カスタマーサポートに求められるもの



カスタマーサポートは、顧客の不安や不満、疑問などを起点に活動を始める、リアクティブな役割です。担当者たちに求められるのは、顧客が抱えている問題を的確に把握し、解決への道筋や方法を見つけ、説明し、納得してもらうことです。そのため、まずは話をしっかりと傾聴し、顧客の感情を読み取り、決して怒らせないように対応するスキルが必要です。顧客の問い合わせの多くはサービスや製品に関する技術的な内容になりますので、迅速な回答を求める顧客を不快にさせない水準の知識も求められます。

カスタマーサクセスに求められるもの



カスタマーサクセスは、顧客のサービス利用開始時のオンボーディングが起点となるプロアクティブな活動です。当たり前に使ってもらうことを旨とするサポートと違い、サービスの魅力を余すことなく伝え、より長く、より大きな規模でサービスを利用してもらうことがミッションです。よって、求められるのは受け身の問題解決だけでなく、顧客のビジネス本質と課題を理解し、より効果的なサービスの利用方法や新たな活用方法を能動的に提案する姿勢です。そのため、解約されたか・されていないか(解約率)、どれだけの追加発注(アップセル/クロスセル)を受けたか、サービスを知人に紹介したいと思ってもらえているか(NPS)など、サポートとは明らかに違う指標のもとに活動を推進します。

カスタマーサクセスとカスタマーサポート違いまとめ

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを5つの観点から端的にまとめます。

活動の起点

カスタマーサポート:サービス利用者の不満(問い合わせ)
カスタマーサクセス:サービスの利用開始

サービスにおいて保証する内容

カスタマーサポート:製品が正常に使えることを保証する
カスタマーサクセス:製品で利用者が成果をあげられることを保証する

品質基準

カスタマーサポート:当たり前品質
カスタマーサクセス:魅力的品質

KPI

カスタマーサポート:問合せの「対応件数」「解決件数」「顧客満足度」など
カスタマーサクセス:「解約率」「追加発注件数・金額」「LTV」「NPS®」など

管理範囲

カスタマーサポート:製品販売後のアフターケア
カスタマーサクセス:利用開始後のオンボーディング、活用推進(ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチ)、契約更新、追加契約など

サービス/フェーズ別、カスタマーサクセスのアプローチ手法の違い



同じSaaSでも機能や価値の提供形態の違いによって、セールス戦略やカスタマーサクセスのアプローチは異なります。

SLGとPLG

SaaSの機能やターゲットとする顧客層の違いによって、セールス戦略は大きく変わって来ます。その違いを示すキーワードが「SLG」と「PLG」です。


SLG(Sales-Led Growth:セールス・レッド・グロース)は“セールスがグロースをけん引する”という意味で、サービスの価値をセールス担当者が伝えつつ販売していくセールス手法です。大企業向けのDX SaaSのように複雑な業務を多くの機能で効率化することなどを目的に導入されるSLGプロダクトは、利用者に高いリテラシーを求めることになるため、セールス専門の担当者による細やかな説明を付する営業活動が適しているのです。高い機能性に比例してサービス価格も高くなる傾向にあり、導入できる企業は限られますが、契約単位の利幅は大きいため、高い営業コストも賄える設計になっているといえます。


SLG戦略で展開されるサービスでのカスタマーサクセスも、やはり人を介した活動が求められることになります。中長期的なコミュニケーションが前提となるカスタマーサクセス活動において、システムだけでなく人もセットとしてサービスの一部になるため、システムに多少の不満を持たれたとしても、担当者が信頼されていれば解約されないという利点があります。逆に、システムには満足していても、カスタマーサクセス担当者がフィットしていないと解約されるリスクは発生します。このように一長一短はあれど、人の工数がかかるという点で不利に思えるSLG型のサービスですが、システム+人で結びつくその仕組み上、乗り換えが起こりにくいという強みはあるといえるでしょう。


対してPLG(Product-Led Growth:プロダクト・レッド・グロース)は“プロダクト自身がグロースをけん引する”という形態です。言い換えると、「プロダクトがプロダクトを売る状態(Product sells itself)を目指すのがPLG」ということになります。


該当するサービスの特徴は、低単価で多くのユーザーが「自分で」利用できる分かりやすい機能を持っている点で、代表的なユーザー獲得手法が基本サービスを無料で提供する「フリーミアムモデル」です。顧客が有料版へと移行するまでにセールス担当者の手をほとんど介さないためCACは低く、セールス活動は契約の有料化におけるハードルを取り除く作業ぐらいです。


PLG戦略をとるサービスの場合、いかに早く利用者に価値を体験してもらうかがポイントになります。価値体感のスピードが早いサービス属性を持つため、SLGと比較して競合サービスへの乗り換えスピードも早いというリスクがあるといえます。


PLGにおけるカスタマーサクセスは、人を介して手厚いヒアリングをし、深層的な課題を見つけるSLGのそれと違い、顧客によく使われている機能は何か、競合と比較した際に見劣りする部分は何かといった、サービスの機能性を高めるための「分析」に比重が置かれます。そのため、顧客とのコミュニケーションよりも、開発との連携により時間と手間をかける傾向にあります。

ハイタッチ/ロータッチ/テックタッチ

SLGが人を介する説明型の営業、PLGがプロダクト体験型の営業、と説明しましたが、これらの活動の「仕方」について、前者はハイタッチ、後者はテックタッチと呼ばれています。


「ハイ」or「テック」の顧客へのアプローチ手法は、セールスからカスタマーサクセスまで一貫しており、契約獲得まではハイタッチ、カスタマーサクセスはテックタッチ、といった差異が生まれるケースはほぼないといえます。


アプローチ手法の種別として、「ハイ」と「テック」の中間に位置する「ロータッチ」と呼ばれるものも存在します。「ハイタッチ」の代表的な活動は、個別レクチャー型のオンボーディング、定例ミーティングや勉強会、顧客ごとの機能カスタマイズや人的な提案活動です。対する「テックタッチ」は、WEBサイト上のチュートリアルコンテンツ(資料や動画)、FAQ、チャットボット、自動音声による電話ガイダンスなどが具体例です。それらの中間にあたる「ロータッチ」では、1対多数で実施するWEBセミナー(ウェビナー)、担当者からの電話・メール・チャットによる返信などが例として挙げられます。


以上のように、提供するサービスの特徴によって顧客とのコミュニケーション手法を変える「ハイ」「ロー」「テック」のタッチモデルですが、もう一つの視点からこれらを「活動し分ける」ことがあります。


高いLTVが見込める大企業などには、サービス自体のSLG /PLGに関わらず、個別担当者によるきめ細かな手厚い「ハイタッチ」によるフォローが適しています。この場合のカスタマーサクセス活動では、顧客専任の担当者や窓口を設置したり、利用状況や定期的なミーティングなどで顧客のニーズをくみ取り、利用の継続を磐石にすることが必要となります。


LTVが中程度となる顧客には、ハイタッチ層ほどにカスタマーサクセスに要するリソースを割くことはできません。必要なところだけ対応を厚くし、それ以外のところはある程度のレベルに抑える「ロータッチ」が求められます。重要な点は、ロータッチで対応する層としてセグメントした顧客でも、一定以上の収益規模を持つ企業かどうか、業種的に想定ターゲットに近い企業かどうかといった観点で、今後のLTV向上が期待できるされた場合は、ロイヤルカスタマーへと導くため、徐々にハイタッチでのカスタマーサクセス活動にシフトしていくことが求められます。


もっとも顧客数の多いLTVが低い層に対しては、なるべくローコストで必要なカスタマーサクセス活動を提供できる「テックタッチ」が適しています。

カスタマーサクセスのシゴトと主要KPI



カスタマーサクセス活動の各フェーズにおける、行うべきシゴトと主要なKPIを紹介します。

オンボーディング:オンボーディング完了率

契約後、顧客がスムーズにサービスを導入し、利用できる状態へと導くのがオンボーディングの役割です。オンボーディングの完了度合いを示す指標が「オンボーディング完了率」です。ここでの完了の定義では「オンボーディングの受講」よりも「サービス利用開始に必要な初期設定の完了」「顧客単独で一通り利用可能になり、サービスの価値を体験できる状態になる」といった基準が適切です。
設定した期間内にオンボーディングを受けた企業の総数のうち、どの程度の企業が完了の定義を満たしたかで算出されます。

利用状況の継続的監視:リテンションとチャーンレート

オンボーディングが完了し、顧客が自立的にサービスを利用してビジネスに活用できるようになった後は、利用状況を継続的に監視して成功体験へとつながっているかをチェックします。その際の指標となるのが「リテンション」と「チャーンレート(解約率)」です。


「リテンション」は、「契約を維持できているかどうか」ということで、リテンション状態を保つことができているか否かを測る指標が、チャーンレート(=解約率)になります。


チャーンレートは、顧客数や契約アカウント数など「数」の増減で評価するカスタマーチャーンレートと、解約/新規契約よる増減金額で変化を測るレベニューチャーンレートの2つに大別されます。それぞれさらに細かい見方が存在しますので、詳しくはこちらの記事(チャーンレート)をご覧ください。

活用方法の提案:アダプション

「リテンション」を保ち「チャーンレート」低下をさせるために注視すべき要素が、「アダプション(利用率向上)」です。利用時間や日々のログイン回数を増やし、顧客の業務において提供するサービスが欠かせない「インフラ化」を目指すための「サービス全体の継続的なカイゼン」により向上をはかります。


サービスをより高頻度で長期間利用してもらい、導入目的をより高いレベルで達成できることを体感してもらうため、カスタマーサクセス担当は顧客の活動を、さまざまな利用データの蓄積やヒアリングなどを通じて継続的に観察し、顧客の成功をもたらす活用方法の提案へとつなげる必要があります。

満足度の確認/アンケート活用:顧客満足度(=CSAT)、NPS

解約を未然に防ぐには、顧客と提供するサービスのマッチ度合いを示す指標「顧客満足度(Customer Satisfaction=CSAT)」を常に把握しておくことが重要です。顧客満足度を高めるには、顧客の業務や抱える課題を理解したうえで、その業務を効率化し課題を解決する具体的な機能を伝える継続的なコミュニケーションが欠かせません。


そのうえで独自のアンケートなどを活用し、サービスに対してどの程度満足しているかを定期的に計測したり、他者への推薦意向を測る「NPS®」を利用して、満足度の変化を確認するよう心がけましょう。

アップセル・クロスセル:エクスパンション

顧客の利用ニーズを的確に満たし、利用継続に必要な顧客満足度を獲得できたなら、次は「エクスパンション(利用拡大)」を狙います。SaaSにおける主な方法は「上位プランへのアップグレード」「利用アカウント数の増加」といったアップセル、「提供するSaaSに付随するサービスの追加購入・追加契約」のクロスセルの2種類があります。

カスタマーサクセスの成功事例



カスタマーサクセスの認知は広がりつつあるものの、本格的に取り組んでいる企業は少ないのが現状です。そのなかでも成功を収めている企業の事例を紹介します。

Salesforce

サブスクリプションのクラウドシステムを提供するSalesforceは、2003~2005年にカスタマーサクセスの部署を立ち上げ、導入後も継続的に利用してもらえるように顧客の業務改善支援を行っています。カスタマーサクセスの部署にはカスタマーマネージャーが在籍しており、顧客の課題に対しゴールを明確にして、人がやるべきこととシステムがやるべきことを分け、社内の合意を図ります。


最大のハードルは、新しいシステムの活用を習慣化することです。Salesforceには顧客のシステム利用状況を分析するツールがあり、システムログに記録されているログイン率とデータ変更率などをチェックして、これらが低い顧客に対して先進事例などの情報提供を行い、活用レベルを上げるサポートを行います。こうした取り組みによって顧客はシステム活用による成功体験を得られるようになり、カスタマーサクセスを実現できます。

Adobe Creative Cloud

Adobeが買い切りモデルからサブスクリプションに切り替え、SaaSビジネスに転身した際、顧客がプロダクトの価値を最大限に引き出せるよう定期的に関わるようになりました。顧客が新しいモデルへの移行にともなって離れていかないように、カスタマーサクセスを実現する必要があったのです。


SMB(Small to Medium Business:中小企業)カスタマーに関するデータ(人口統計、企業統計、利用データ)を調査し、予測スコアリングや予測分析を行い、セグメントに最適な手段・タイミングでコミュニケーションをとりました。例えば、ヘビーユーザーとチャーンリスクがあるユーザーではアプローチの仕方も変わるため、ハイタッチとテックタッチを切り替え、どれだけ効果があったかをフィードバックし、継続的に改善を重ねました。


データに基づいてプロセスを自動化して、優れたCRMシステムを活用し、顧客と直接コミュニケーションする人材に投資をすることでカスタマーサクセスを実現し、SaaSビジネスとしても大きな成功を収めたのです。

Sansan

法人向けの名刺管理サービスを提供するSansanはサブスクリプションであり、継続利用が前提となるビジネスです。数年で顧客企業の担当者が変わったり、役職が上がったり、また導入目的そのものも変化していきます。当期の目標を踏まえて、どうSansanを活用し何を実現していくのかを把握しながら顧客の変化に対応することがカスタマーサクセスのポイントです。Sansanは顧客と共通の目標を持って二人三脚で取り組む姿勢を意識し、柔軟な対応で変化に対応しながら手厚いサポートを行いました。


具体的には、導入目的を6つにプロットしたサクセスマップから、顧客に導入目的を選んでもらったり、課題解決のための手順やシナリオを提供したりして顧客との良好な関係を築き、課題に合わせた提案をすることでカスタマーサクセスを実現しています。

マネーフォワード

法人・個人事業主向けのクラウド会計サービスを提供するマネーフォワードでは、導入する顧客企業と会計顧問となる会計事務所がともに同じサービスを使う必要があるため、顧客企業向けのカスタマーサクセスに加えて、会計事務所が顧問先へと導入を薦める際のカスタマーサクセスをサポートする体制を構築しているのが特徴です。


会計事務所へのセールスを担当する部署では、シームレスな対応を求める顧客のニーズに応じてセールス担当者がそのままオンボーディングを担当しますが、100名〜300名規模の中堅企業や成長企業を担当する部署では、クロージング後に営業担当から引き継いだオンボーディング担当が顧客へのオンボーディングを行います。担当顧客のタイプによって部署を変え、顧客の利用形態に合わせた最適なカスタマーサクセス活動を実現しているのです。

 

「カスタマーサクセスとはなにか」という問いへの答えとして、定義や意味、活動の要点、そして混同されやすいカスタマーサポートとの違いなどについて、解説してきました。カスタマーサクセスの目的であるLTV最大化が実現できるよう、「自社のサービスが顧客へ提供できる成功体験とは何か」「その体験を継続させるのに必要な取り組みと重視すべき指標は何か」を改めて意識し直して、カスタマーサクセスへの理解を深め、顧客の成功への最適なアプローチを導き出しましょう。

尾上 雄馬

執筆者情報:

尾上 雄馬(おのうえ ゆうま)

2007年に株式会社ビーエスピー(現ユニリタ)入社。
ITサービス向けヘルプデスクSaaS「LMIS」を新規開発から開発を担当。
開発業務の傍らサポートも兼務していたが、解約率の高まりに危機感を感じ、2017年より同サービスのカスタマーサクセスチームを立ち上げ責任者を担当。
カスタマーサクセス管理用のツールを内製し、解約率半減を実現。
この管理ツールを汎用化し、Salesforce上で稼働するカスタマーサクセス管理SaaS「Growwwing」として販売開始、2020年7月より事業化し責任者を担当。
itSMF JapanにおいてクラウドSLA分科会副座長、サービスカタログ分科会座長も歴任。


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