【基礎編】サブスクリプションとは?他ビジネスとの違いやメリット・デメリットを解説
サブスクリプションとは、ユーザーが製品やサービスを一定期間「利用する権利」に対し、料金を徴収するビジネスモデルです。ユーザーニーズが所有から利用へと変化する中で、多くの企業が取り組み始めています。
今回は、サブスクリプションビジネスについて、基礎編と実践編の2回に分けて詳しく解説していきます。この基礎編では、サブスクリプションの意味と、レンタルやリース、リカーリングとの違いのほか、サブスクリプションビジネスのメリット・デメリットを、ユーザー側と事業者側の両面から説明します。
サブスクリプションとは
最初に、サブスクリプションの意味や、他の類似サービスとの違いを解説します。
サブスクリプションの意味
サブスクリプション(Subscription)とは、製品やサービスそのものの「所有」に対し代金を請求するのではなく、一定期間「利用」する権利の対価として、料金を請求するビジネスモデルのことです。月額制の動画配信サービスのほか、音楽や車、家具家電、洋服の貸し出しにも、サブスクリプションの製品やサービスが増えてきています。
リースとの違い
リースは、自動車や複合機、サーバーなど、比較的高額な製品や設備などの「ハード」を、契約者の希望に応じてリース会社が購入し、それを貸し出すビジネスモデルです。一般的には「長期契約」を前提とし、月額料金を請求します。サブスクリプションはいつでも解約できますが、リースは長期契約が前提なので、途中解約をすると違約金が発生する場合があります。
レンタルとの違い
レンタルとは、1日~数日、ないしは、時間単位という「短期前提」で、こちらもおもに「ハード」を貸し出すビジネスモデルのことです。レンタル会社がもともと所有するものを契約者に貸与するところが、リースとの違いです。
ハードのレンタルはサブスクリプションビジネスと混同されがちですが、例えば、成人式の振袖などは「一生に一度、一日だけ」ひとつのハードを貸し出すレンタルであり、最新のおしゃれ着を毎月数アイテム渡す・回収するようなサービスはサブスクリプションといえます。この場合、レンタルは短期・単一製品の貸し出し、サブスクリプションと呼ばれるのは複数製品を長期に渡って、渡す・回収する・渡すのサイクルで「貸し出し続ける」という違いがあります。
リカーリングとの違い
リカーリングとは、ベースとなる製品・設備とセットで使用する消耗品を継続購入させるビジネスモデルです。ウォーターサーバーやプリンターなどが代表的な例ですが、世界的に有名なのは本体と替え刃のセットで提供する「髭剃り」が先駆けといわれています。
こういった製品のほか、電気やガスなどのように、基本料金のほかに毎月使った分の従量課金を支払うサービスもこれにあたります。サブスクリプションは、毎回一定金額の支払いですが、リカーリングは、消耗品に対する従量課金であることが違いとなります。
ますます拡大するサブスクリプションビジネス
サブスクリプションビジネスは近年急成長しており、今後も拡大するとされています。その急増した理由や、今後の市場の展望を説明します。
サブスクリプションが浸透した背景
サブスクリプションが急増した理由のひとつに、「所有から利用」へと消費行動が切り替わったことが挙げられます。かつては機能やスペックを重視した「モノ」の消費から、「コト」「イミ」「トキ」など、体験を重視する消費へと価値観が変化しています。ひとつのモノを所有し続けるよりも、いろんな物を少しずつ、使いたいときだけ使って体験を得る方へと、発想がシフトしたのです。サブスクリプションが急増した理由のひとつに、「所有から利用」へと消費行動が切り替わったことが挙げられます。
かつては機能やスペックを重視した「モノ」の消費から、「コト」「イミ」「トキ」など、体験を重視する消費へと価値観が変化しています。ひとつのモノを所有し続けるよりも、いろんな物を少しずつ、使いたいときだけ使って体験を得る方へと、発想がシフトしたのです。
また、インターネットの普及で情報量が増えたことから、ユーザーは自分に合った製品やサービスを簡単に選べるようになりました。その結果、競合が激化し、売り手はユーザーのニーズに応えるものを提供するため、新製品やサービスの開発に追われるようになっています。
このようにビジネス環境がシビアになる中で、サブスクリプションは市場に受け入れられれば、安定した収入を得ることができるビジネスモデルです。積み上げ型の収益(LTV)が期待できることを理由に、参入する事業・企業が増えています。
今後も成長が予測されている
「矢野経済研究所が2021年4月に発表した調査データ」によると、2020年度の国内サブスクリプションビジネス市場は、前年比28.3%増の8,759億6000万円となっています。また、2021年度は、前年比13.8%増の9,965億円になると見込まれ、さらに2023年には1兆円超えの、1兆1,490億円になると予測しています。ここ数年は2桁増が見込まれ、サブスクリプション市場が一層活性化すると考えられます。
サブスクリプションの増加にともない、カスタマーサクセスやLTVといった新たな役割、指標に対する認知も広がりを見せています。
それらの市場実態に関する詳細についてはぜひこちらのホワイトペーパーをご覧ください。
サブスクリプションビジネス【事業者側】のメリット
ここからは、サブスクリプションのメリット・デメリットを解説します。最初に、事業者側が得られるメリットを説明します。
継続的な収益を見込める
サブスクリプションは、契約が成立すると継続的な売上を見込むことができます。売上の見通しも立てやすくなり、将来の利益を試算できるので、安定した経営につながります。
顧客の詳細なデータを把握できる
ユーザーの利用履歴などを蓄積できるので、データを分析・活用することで、顧客ニーズに合ったサービスの改善が可能となります。これにより、顧客満足度を高めて解約を抑えることができ、好評価の口コミ拡散で新規顧客獲得も期待できます。
新規顧客を獲得しやすい
サブスクリプションは、定額制なので初期費用を抑えられることから、ユーザーが気軽に利用しやすく、幅広い層を取り込むことが可能です。
サブスクリプションビジネス【ユーザー側】のメリット
続いて、ユーザー側のメリットをまとめました。
低コストなので始めやすい
サブスクリプションは、ユーザーにとって、比較的廉価な定額料金でスタートできるメリットがあります。例えば、月1,000円で1万本以上の動画見放題などの動画配信サービスは、レンタルに比べ、圧倒的にコストパフォーマンスも優れています。
いつでも登録・解約ができる
サブスクリプションの多くは、インターネット上で簡単に登録ができ、気に入らなければすぐに解約ができます。手元に不要な製品が残ることもありません。
利用するほどお得になる
サブスクリプションでは、使い放題のサービスが多く、数回利用すると元を取れるケースが少なくありません。また、利用頻度に応じた複数のプランが用意されており、頻度が高いほど、1回あたりの単価は安くなります。
所有する必要がなく場所や管理不要
製品やサービスを利用するだけなので、保管場所や管理をする必要がありません。音楽や動画、クラウドツールなどの利用ならば、受け取りや返却などの手間もかかりません。
サブスクリプションビジネス【事業者側】のデメリット
サブスクリプションには、メリットだけではなく、デメリットもあります。事業者側のデメリットから見ていきましょう。
導入のためのノウハウやリソースが必要
サブスクリプションビジネスに参入するには、コンテンツやシステムの開発費、顧客対応用の人件費のほか、サブスクリプションビジネスに関するノウハウが必要となります顧客ロイヤルティを向上させ、継続的に利用してもらうためにも、カスタマーサクセスの知識やスキルのある人材も必要となります。自社にこうしたリソースが不足している場合は、アウトソーシングする必要も出てきます。
収益化までに時間がかかる
サブスクリプションビジネスは基本的に長期利用を前提とした低額・定額課金となり、開始した直後は利用者も少なくいため、を収益は限定的です。。ビジネス開始の初期段階から綿密に計画を立てておき、初期の開発費用、新規顧客獲得にかかる費用などを、積み上がった継続収益であるLTVをもって、いつから黒字化するのかをシミュレーションしておくことをおすすめします。
解約を防ぐための継続的なフォローが必要
サブスクリプションは、ユーザーが「継続利用してくれる」ことが前提のビジネスになります。そのため、顧客ロイヤルティを高め、解約を防ぐことが重要です。ユーザーのビジネス状況やサービスの利活用状況を蓄積し、ニーズにマッチした、より魅力あるサービスへと進化させるため、継続的に改善していく必要があります。
サブスクリプションビジネス【ユーザー側】のデメリット
ユーザー側のデメリットも説明しておきましょう。
利用しなくても料金が発生する
サブスクリプションは、原則毎月・毎年の定額制なので、使っていなくても料金はかかります。利用期間や頻度によっては、かえって割高になることもあります。
不要なコンテンツ、サービスが含まれることもある
サービスの中には、必要ではない機能やコンテンツが多く含まれていることもあり、その分の料金を支払っている可能性もあります。ユーザーは、契約時はもちろん、都度利用状況を確かめながら、料金プランを吟味する必要があります。
解約するとサービスを利用できない
一般的には、解約したその瞬間からサービスを利用できなくなります。再び利用したいときは、再度登録が必要となります。
サブスクリプションでビジネスを成功させる3つのポイント
最後に、サブスクリプションビジネスを成功させる主なポイントを解説します。
1.組織全体でマインドや役割を認識しよう
サブスクリプションを成功させる最初のポイントは、組織内に継続利用を持続させるための、カスタマーサクセス専門組織を設置して、組織全体でマインドや役割を共有できる体制づくりです。サブスクリプションを成功させる最初のポイントは、組織内に継続利用を持続させるための、カスタマーサクセス専門組織を設置して、組織全体でマインドや役割を共有できる体制づくりです。
カスタマーサクセスは、顧客が必要とする製品やサービスを継続的に提供して、顧客ロイヤルティを上げ、LTVを最大化することがミッションです。この目的を効率よく達成するには、営業関連の部署だけではなく、マーケティングやカスタマーサポートなどとの連携も必要となり、全社をあげて対応することが重要です。
実際にサブスクリプションビジネスを進めるには、組織全体でKPI・KGIや方針を共有し、各部署の役割や連携方法なども決めて進めるようにしましょう。
2.顧客満足度を高め、信頼関係を構築しよう
サブスクリプションビジネス成功の秘訣の2つめは、ユーザーの解約を防ぐために、顧客満足度の向上と信頼関係の構築を継続的に行うことです。サブスクリプションビジネス成功の秘訣の2つめは、ユーザーの解約を防ぐために、顧客満足度の向上と信頼関係の構築を継続的に行うことです。
そのためにも、サブスクリプションではユーザーが望む価値・機能を提供し、それを利用することでうまれる新たな価値を創造することが重要となります。また、ユーザーの多様なニーズに合ったプランを用意することや、競合他社では与えられない顧客体験(CX)を提供することもカギとなります。定期的に効果検証を行い、改善や対策を講じることも、顧客ロイヤルティ向上につながります。
3.見るべき指標を設定しよう
最後のポイントは、サブスクリプションのKPI測定などで利用する指標を明確にしておくことです。最後のポイントは、サブスクリプションのKPI測定などで利用する指標を明確にしておくことです。
サブスクリプションの効果を測定する指標には、現状の利益がわかり、今後の行動指針にも活用できる「MMR(月間経常収益)」や「ARR(年次経常収益)」、顧客の満足度やロイヤリティを推測できる「ChurnRate(解約率)」や「NPS(他者推奨度))、「LTV(顧客生涯価値)」などがあります。自社の目的に合った指標を使って効果検証を行うことで、適切な対策を行うことができ、売上増や企業の成長につながります。
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【実践編】サブスクリプションビジネスの事例や成功のポイント、6つのKPI指標も一挙解説
まとめ:サブスクリプションでは、顧客ロイヤルティを高めてLTVを最大化する
一定期間利用する権利に対して料金を支払うサブスクリプションは、ユーザーの価値観の変化や、事業者側の安定した収入を見込めることから浸透しました。事業者にもユーザーにとってもメリットが多く、さまざまな業種・業態の企業が参入し、利用者も増え続けていることから、今後も伸長が期待されているビジネルモデルです。
サブスクリプションビジネスは、ユーザーに継続利用してもらうことが大前提で、顧客が望むCXの提供や、恒常的な顧客ロイヤルティ向上施策を行わねばなりません。ビジネスを効率よく進めて成功させるには、こうしたノウハウやリソースが必要となります。
サブスクリプションビジネスの着手を検討しているならば、ぜひ参考にしてください。
執筆者情報:
松本 隼陽(まつもと じゅんや)
2018年にBtoCスタートップ企業に入社後、訪問営業を経験。 2019年にエンジニアリング会社へ転職し、開発・運用保守・サポートの現場を経験。 その後、2022年に株式会社ユニリタに転職し、カスタマーサクセスチームのリーダーとして、オンボーディング支援やセミナー講師を担当するなど日々奮闘中。
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