Growwwth Noteは、SaaS / サブスクリプションの事業成長を目指す、
すべてのビジネスパーソンのためのカスタマーサクセスメディアです。

  1. Growwwth Note
  2. 事例/インタビュー
  3. 【サクセスボイス Vol.9】バーティカルSaaSのグロースに必要な「考え方」がここに!不動産業界のDXを力強く推進する、CS統括責任者の戦略大公開

【サクセスボイス Vol.9】バーティカルSaaSのグロースに必要な「考え方」がここに!不動産業界のDXを力強く推進する、CS統括責任者の戦略大公開

  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
【サクセスボイス Vol.9】バーティカルSaaSのグロースに必要な「考え方」がここに!不動産業界のDXを力強く推進する、CS統括責任者の戦略大公開

Growwwth Noteは、すべてのビジネスマンのためのカスタマーサクセスメディアです。

初心者からCSにどっぷりのツワモノまで、幅広い読者にお楽しみいただけるコンテンツをお届けしています。

 

今回は、リアルな企業によるリアルなカスタマーサクセスを紹介する【サクセスボイス】第9弾!サクセスボイス初!CS組織の統括責任者としての顔を持ちながら、会社の経営陣としても名を連ねる、イタンジ株式会社 / 執行役員の長谷川 拓也(はせがわ たくや)氏から話をうかがうことができました。

 

複数の大企業における組織・事業のマネジメント経験をフルに活かしつつ、ベンチャー企業のグロースに、自らも現場で走りながら貢献されているビッグプレイングマネージャーの「勝つための戦略」をご堪能ください。








不動産の本流から気鋭のベンチャーへ


最初に自己紹介をお願いします

イタンジ株式会社 / 執行役員 / カスタマーサクセス統括責任者、長谷川拓也です。

 
(簡単に経歴も教えてください)

関西学院大学を卒業後、大手アパレル企業に入社しました。その後は全保連、野村不動産、リクルートを渡り歩き、GAグループに参画したのが2018年、イタンジには出向する形で2019年4月からジョインしています。

 

イタンジにジョインされた経緯を教えてください

シンプルに「おもしろそうな会社だな」と思ったことがきっかけです。私がGAグループに入ったのが2018年の12月で、イタンジが同グループ傘下になってまだ数ヶ月という時期でした。創業から6年を経て、一定規模の事業を運営するに至ってはいたのですが、さらなる成長に向け、法人営業部を統括する人間やエンタープライズセールス/カスタマーサクセスを率先垂範しつつ組織を統括できる人材が必要な状況でした。


 

(それで手を挙げられた、と?)

そういうことです。


 

(イタンジのどういったところに興味を持たれたのでしょうか?)

不動産業界が長年抱える「負」を「本質的に解決できる」可能性を秘めたサービスを提供しているところです。不動産業にはアナログでレガシーな文化や業務が色濃く残っています。アナログであり続けるべきものも勿論あるのですが、多くはデジタル化クラウド化する方が、効率的にも収益的にもよいものが多いといえます。

また、デジタルトランスフォーメーションによって恩恵を受けるのは不動産業者だけではありません。住まいやオフィスを探す入居者も、より整備された正確な情報を、よりスピーディに入手できるようになります。業界全体でこの現象が起きれば、不動産流通の効率が飛躍的に向上することになります。

不動産に関わるものとして、この変革に関わることができるのは大きな魅力でした。



 

目指すは業界全体のDX!イタンジが解決する不動産業界の本質的課題

 

貴社サービスについて教えてください

複数プロダクトの集合体なんですが、サービス全体を通じて実現しようとしているのは「不動産業界の網羅的DX推進」です。それを共通の世界線として、リアルタイムな物件情報で仲介会社、管理会社の業務を支援する業者間サイト【ITANDI BB(イタンジビービー)】、物件提案以降の内見、入居申込、契約、更新、退去後の原状回復といったプロセスを自動化/効率化するプロダクト群【ITANDI BB+(イタンジビービープラス)】、そして、物件検索から内見予約、契約まですべてをオンラインで行える賃貸サービス【OHEYAGO(オヘヤゴー)】の3ブランドで展開しています。



【ITANDI BB】について詳しく教えてください

不動産流通には複数のプレーヤーが存在しています。細かく話すとキリがないので、おおまかに分けていきます。まず、物件の持ち主であり、買い主や借り主になる入居者を探している「オーナー」。オーナーから入居者探しや物件の管理を任されている「管理会社」。物件の管理業務はせず、オーナーや管理会社から物件紹介の許可を得て、特化的に入居者探しだけをする「仲介会社」、そして「入居者」になります。

 

一般的な不動産流通では、オーナーから物件の「管理」を任された管理会社が、まずは業者間サイトに物件を掲載します。ここだけ切り取るとシンプルな話ですが、この「掲載」までの間に、オーナーは管理してくれる管理会社を探し、管理会社は任せてくれるオーナーを探すということに結構な工数をそれぞれがかけています。

 

掲載後は多くの仲介会社が、ポータルサイトや自社サイトに情報を掲載すべく物件に対する問い合わせをしてくることになります。紹介してくれるという仲介会社を拒む管理会社はまれなので、基本的にひとつの物件に複数の仲介会社が絡むことになります。こうして複数の仲介会社によって、サイトに掲載された物件が、多くの入居希望者と出会うことになります。こういった仕組みから、入居希望者が「いいな」と思って問い合わせをし、仲介会社に行った後に「先に申込をした入居希望者がいました」なんていうことが起こってしまうわけです。ただ、これはオーナーや管理会社目線からすると当然なことでもあります。とにかく入居してもらいたいというメンタルが強い彼らからすると、入居が確定するまでは、なるべく多くの人の目に触れるところに、物件情報を置いておきたいわけです。よって、「契約」に至るまでは、すでに申込が入った物件の情報がポータルサイトに載り続けることになります。しかしながら、水面下で物件の流通は進んでいるのです。

 

 

(物件の状況に関する情報の更新と流通実態の間にタイムラグができてしまうということでしょうか?)

その通りです。ただ、申し上げた通り、オーナーや管理会社に罪はありません。彼らは必死に入居者を探そうとしているだけです。ただ、この仕組み上どうしても発生してしまうタイムラグは、仲介会社や入居希望者にとってはペインでしかありません。できれば本当に提案できる物件、入居できる物件だけを目にしたいはずです。また、オーナーや管理会社としても、入居者を連れてきてくれる仲介会社には「効率よく、気持ちよく自分たちの物件を紹介してもらいたい」というニーズがあります。

 

 

(ここで登場するのが【ITANDI BB】ということですね)

その通りです。【ITANDI BB】では、24時間365日、内見や申込の状況までサイト上にて確認することが可能です。物件の内見や申込を管理するシステムと業者間サイトとで分断されていた情報を、ひとつのところで管理することで、仲介会社が閲覧できる物件情報が、流通実態と同期された状態に保つことができるようになります。内見希望者が現れるたびに、仲介会社から管理会社やオーナーに「電話でしていた空室確認の問い合わせ」も不要になります。

 

 

(ユーザーからの反応はいかがでしょうか?)

おかげさまで大変ご好評をいただいています。今年3月には仲介会社からのアクセスが累計1億PVを突破し、直近では7月の月間PV数が過去最高の約860万を超えました。これは昨年対比で52%の伸びを示す数字になります。内見予約は20秒に1回のペースで入っており、また、サイト上で最新情報を参照できるようにすることで、営業時間外の問い合わせを多く確保できることも分かりました。問い合わせ総数の実に約3割が20時から翌朝の9時までの間というデータが取れています(※)。これは結構なインパクトなので、管理会社の方々が前向きに情報掲載を継続してくださっている大きな一要因だと思います。

 (※)2021年実績より算出



【ITANDI BB+】、【OHEYAGO】についても説明をお願いします

【ITANDI BB】が「物件情報」という不動産流通のソフト面を最適化するものであるのに対し、【ITANDI BB+】は情報の流通プロセスごとに発生する内見・入居申込から退去後の原状回復までの業務執行面を効率化するプロダクト群です。それぞれのプロセスごとに「内見予約くん」「申込受付くん」といった形で個別のプロダクトを展開しています。
利用者数は順調に伸びており、調査会社による一都三県の仲介会社向けのアンケートでは、内見予約WEB受付システムの「内見予約くん」、WEB申込受付システムの「申込受付くん」、電子契約システム「電子契約くん」、顧客管理・自動物件提案システム「ノマドクラウド」の4サービスで仲介会社利用率No.1を獲得しています(※)。

(※)関連プレスリリース:https://www.itandi.co.jp/news_posts/1104

 

【OHEYAGO】は、【ITANDI BB】により「Webサイト上で物件の本質的な最新情報が流通している世界」が実現できたことで展開可能になったBtoCサービスです。「内見できる物件」のみを可視化できる状況にし「セルフ内見を許容するかどうか」の意思をオーナーや管理会社にプラスアルファで示してもらうことができれば、仲介会社や入居希望者が「自分たちだけで内見できる」環境が整うと考えました。

 

(提供サービスについて、他に補足はありますか?)

プロダクトの説明としては以上になりますが、導入を検討いただいる企業様向けに、不動産業のDX推進において必要なノウハウなどを提供することで、スムーズに導入を進められるような施策も行っています。

 

プロダクト全般において支持を得ているハード(機能)面の強みとして、

 ●直感的に操作できるUI
 ●業務を一気通貫で効率化できるプロダクト展開
 ●情報流通/業務推進と連動してデータが蓄積されるCRMの提供
 ●「不動産会社様に特化した」柔軟なシステム/データ間連携
  →不動産業界/業務を熟知しているからこそ提供できる機能=パートナー連携
   └保証会社、保険会社といった業界内の他領域システムとのAPI連携

 
といった要素が挙げられます。ただ、いくら充実した機能があっても、あまりに高価格であったり、使いこなすためのフォローが不足しているとユーザーに満足はしてもらえません。そのため、提供コストの最適化に向けた取り組みや、カスタマーサポート/サクセス活動に対しても、プロダクトそのもののエンハンスと同等以上に心血を注いでます。


 

(「不動産業界/業務を熟知しているからこそ提供できる」とありますが、業界を熟知されている背景はなんでしょうか?)

もともとイタンジが不動産管理/仲介業で創業しているからです。創業メンバー自らが実務にあたり、そこで感じた非合理的なこと、非効率的なことを解消するためにつくりあげたのが、現在イタンジが提供しているサービスです。

 

 

(業界に詳しいことと、プロダクトを開発できることは必ずしも直結しないと思われますが・・・)

実は代表の野口、執行役員の福崎、永嶋の創業メンバー3名と、少し後の2015年にジョインしている同じく執行役員の濱田も含めた全員がエンジニア出身なんです。そんな彼らがなぜ不動産業で創業したのかについては、また機会を改めて、本人たちにインタビューしていただければと思います。



聞いて納得、聞かねばまず気づけない!目からウロコの発想と戦略に基づくカスタマーサクセス

 

イタンジのカスタマーサクセス活動について教えてください(1/3:オンボーディング)

(まず、長谷川さんのミッション/KGIはなんでしょうか?)

売上・利益を最大化することがボードメンバーのミッションです。カスタマーサクセスにブレークダウンすると、LTVの最大化(チャーンやダウンセル防止、アップセル/クロスセルの機会創出)やNRR100%以上、CAC payback periodの短縮があります。KPIはさらにブレークダウンし、行動KPIを設定しております。

 

定量のミッションだけではなく、イタンジのミッションである『テクノロジーで不動産取引をなめらかにする』を実現するために、顧客の課題特定から解決施策の提案をミッションとしています。

 

私個人だとミッション達成のため、及び収益を向上させるためにイタンジのアセットを活用した新規事業開発や事業推進をミッションとしています。



(責任者レイヤーの方だと当然そうなりますね笑)

そうなんです。ただ、これはイタンジに限った話ではないと思います。LTVをKGIとするのは一般的なこととして、それを達成するための「KPI」にどういったものを置くのかで事業や組織ごとの特徴が出てくるわけですが、我々はここに「オンボーディング完了率」を設定しています。チャーン/リテンションレートに着目するという話をよく聞きますが、イタンジではあえてオンボーディングを重視するよう、組織全体の意識を統一しています。



(オンボーディングがうまくいけば、他の指標は自然とよくなる、ということでしょうか?) 

その通りです。オンボーディングを完全にやり切って、顧客に不安ゼロ状態でサービスを活用し続けてもらえれば、不動産業を辞めでもしない限り、理屈上解約はされないはずなんです。そのため、初回のキックオフミーティングの前と後をオンボーディング前期/後期という形で明確に切り分けし、それぞれのフェーズでやるべきこと細かく定義し、抜け漏れが発生しないよう活動を型化しています。



(「やるべきこと」の具体的な内容を教えてください)

キックオフミーティング前のオンボーディング前期では、顧客の要望と導入の背景をしつこいぐらいにヒアリングします。どういう課題があり、イタンジのプロダクトでそれをどう解決できると期待し、導入を決定されたのかや、稼働を開始したい具体的な時期などを明確化していきます。さらに、どんな事業でも経営層が感じている課題と、現場が抱えている問題では属性が違うケースが多いので、それぞれ個別に把握するようにしています。

 

課題のヒアリングはセールスも「お客様への提案の素」として行ってくれていますが、あくまでご契約いただくまでです。そのためセールスがヒアリングしてくれた内容を「たたき台」としつつ、多くの場合は開発領域に詳しいCSMが課題の詳細を技術的側面から深ぼったりします。「マストではないけどあるとベター」と思っておられることなどを深掘りしているととらえていただければ幸いです。

 

(緻密なヒアリングは大きな安心材料ですが、各メンバーの確認項目の抜け漏れに対する対策はされていますか?)

ここでカスタマーサクセス専用のプラットフォームである「Growwwing」をフル活用しています。契約後顧客のステータスを管理する際に、必要事項を入力しきらないと、次のプロセスに進めないよう設定しています。各CSMは少しでも早く顧客のステータスを前に進めたいメンタルですので、精力的に入力を完了させようとします。そうなると自然にヒアリング上の抜け漏れも減っていきました。

オンボーディングの後期は、キックオフミーティングにおける顧客からの「インプット」に基づき、初期のサービス使用環境を構築する形で「アウトプット」し、それを評価してもらい、さらに適宜手を加えつつ稼働開始まで誘導していくプロセスになります。



イタンジのカスタマーサクセス活動について教えてください(2/3:定着〜拡大)

(オンボーディング完了後の活動について教えてください)

愚直に「ハイタッチ」を主軸として顧客に伴走しています。サービスの中に複数のプロダクトが存在しており、使用/活用すべき機能が無数にありますので、スムーズにオンボーディングが完了したとしても、その後立ち止まってしまう顧客は出てきます。また、冒頭でも述べたように、「デジタルに大いに明るい」業界ではないので、「本質的な業界DX」を目指すならば、当面は複数の企業を一度に対応するのではなく、1対1できめ細やかに対応することがベストだと思っています。

ちなみに、この定着化支援を担当するCSMは、オンボーディングを担当するメンバーとは別人格を立てています。理由は目指すべきKGI(LTVではなく、ミッションごとのKGI。オンボーディング担当でいえば、「オンボーディング完了率」)が違うからです。複数のゴールに並行して向かうことができる人も世の中にいるとは思いますが、やはり「あなたにはここを頑張って欲しい!」と専門的に任せる方が、成果を上げてもらいやすいだろうと考えています。

 

 

(契約の拡大についてはどういう体制で取り組んでおられるでしょうか?)

初期導入サービスにおける活用が十分に浸透したことを確認できた顧客から、状況や環境に応じて有効と思われるプロダクトやオプション機能を、担当のCSMから適宜打診するようにしています。そこで顧客からいいリアクションがもらえたら、セールスに引き継ぎます。

 

 

(セールスに戻す、ということでしょうか?)

現状の組織実態として、セールスとカスタマーサクセスは一事業部に共存していますので、我々の感覚として「戻す」ということはなく顧客をそれぞれのポジションからサポートしているイメージです。

一般的な解釈でいうと戻すということになりますね。

 

 

(あまり聞いたことのない流れだと思いますが、どういった戦略上の理由からセールスに「戻す」のでしょうか?)

シンプルに導入いただくためのアプローチならセールスの方が得意だからです。既存顧客が相手とはいえ、アップセル/クロスセルは「新規の契約追加」です。サービスを使ってもらって「良かった」と思ってもらうのがカスタマーサクセスだとすれば、「未導入」のプロダクトやオプションの魅力を訴求して「良さそう」と思ってもらう作業はセールスの方が絶対に上手いはず、という論理です。実際にうまくワークしています。ただ、これは不動産業界という単一業界に特化したバーティカルSaaSだからこそ成立するスキームだと自覚しています。ホリゾンタルのように、日本中のすべての企業を対象とするサービスだと、セールスは相対する(潜在)顧客の数を最大化する必要が出てきます。そうなると背負うミッション/業務は反比例的に絞っていかなくてはなりません。ターゲットとなる顧客の数が限られているからこそできていることだと思います。

 

 

イタンジのカスタマーサクセス活動について教えてください(3/3:その他の取り組み)

(その他特徴的な取り組みについて教えてください)

まず、これは活動ではなく組織設計の話になりますが、直近でエンタープライズとSMBという担当する顧客の規模ごとにチームを分けました。それぞれにセールス、オンボーディング、カスタマーサクセスが内包されている形です。理由は、サービスのエンハンスが進み、一定の売上/組織規模の顧客であれば、そこまで手厚いハイタッチ対応がなくても、オンボーディングや定着化支援ができるようになってきたからです。イタンジのグロース初期は「顧客ごとの規模」にこだわって事業を推進してきましたが、大企業顧客での導入実績が一定量積み上がってきたことにより、サービス・プロダクトも人的活動も「型化」できてきたので、ここからは「顧客数」の拡大が目標です。

 

(「型化」の具体例をいくつか教えてください)

顧客に対する定期フォローの仕組化を進めています。SMBについては特段分ける予定はありませんが、エンタープライズ顧客については、「決裁者」と「現場」に分けております。オンボーディング、カスタマーサクセスといったステータスごとに、「誰がどのタイミングで、どういったアプローチをし、どういったプレゼンをするのか」を標準化する取り組みです。

また、データの可視化も進めていく予定です。各役割ごとのKPI/KGIをリアルタイムに「わかりやすく」把握できるよう、試行錯誤しています。理想的な環境構築の途上ではりますが、今後顧客数を大きく伸ばしていくためには急務であると考えています。

 

 

課題は尽きない。やり甲斐も尽きない。永続的に進める改善、育成、事業グロース

 

今感じている課題感と今後取り組みたい活動について教えてください

採用と育成の強化です。特にマネージャー層の育成に注力したいと思っています。イタンジに限った話ではないと思いますが、やはりミドルマネジメントが強い企業は事業的にも強いと、過去の経験からも実感しています。

 

 

(マネージャー層育成のための具体的な施策を教えてください)

「場」を提供すること、です。もう少し詳しくいうと、「事業上の大きな判断をする『場と裁量』」を提供すること、要するに、顧客ごとに事業部をつくり、そこの長になってもらうということです。先述した「組織設計」の話もこれに由来するものです。

 

 

(挑戦的な取り組みですね)

そうですね。ただ、無論放置するわけではありません。しかしながら、この措置によって、厳しい状況、大きな取引といった局面に対する「一次回答」をマネージャー自身で出してもらう環境をつくることはできると思っています。また、事業部を任せるということは「やり方は任せる、数字だけよろしく」ということであり、具体的な行動/活動は自分で決めてもらう必要があります。これもミドルマネジメントの成長には欠かせない要素だと考えています。

 

 

(この点だけ切り出すと、先ほどおっしゃっていた「型化」とは逆行した動きに見えますが・・・)

ただ、自由にやってもらいたいのは「提案」の方で、「必ずやらないといけないこと」については大いに「型化」していくということです。サービス/プロダクトとして最低限提供しないといけない機能や体験価値を実現するための業務は、行動レベルでガンガンルール化し、この精度を上げて「最低限のレベル」も上げていくつつもりです。そして、マネージャー層にはここに脳みそを割いてもらわずに済むようしたいというのが経営メンバーの考えです。業務は「型化/標準化」、提案は「属人化/属顧客化」ということです。

 

 

(提案の「属人化/属顧客化」とはどういうことでしょうか?)

我々がサービス全体を通じて実現したいのは、不動産業界における非効率でありながら「当たり前の業務」から業界関係者全員が解放された世界です。目の前の作業に忙殺されてしまうと、よりいい物件を提案しようとする意志や、業界関係者が相互に今以上の幸せを目指すための施策を考える機会が奪われてしまいます。なので、「Must Do」は限りなく自動化し、「Better to Do」の提案に向けた企画を考える、プレゼンできることだけに集中できる環境を目指したいわけです。

ということを前提に、話をイタンジ社内に戻しますが、「提案」は最低限ではなく「最高」を目指すことを目的としたものであるべきで、これを実現するためには、顧客ごとの「超個別最適」をゴールとしつつ、各マネージャーそれぞれの「属人的な全力」によるアイディアに基づいて考えられた施策が絶対に必要である、ということです。

 

(ひとことでいうと・・・)

「最低限の業務効率化はプロダクトアウトで解決」

「最高を目指す提案はマーケットインで実行」ですね。



最後に、サービス/プロダクトを超えて、イタンジとして取り組まれたいことがあれば教えてください

現在は、地方の展示会に出展したり、屋外広告に看板を出したり、地道な活動を続けています。DXの重要性をとなえ、デジタルを全面的に駆使する企業ではありますが、それだけですべてが成立するとは思っていません。不動産業界全体のさらなる成長と躍進、イタンジの発展のために、できることは全部やり切るつもりです。

 

僭越ながら、不動産テック企業としては躍進している企業であると自負しており、主軸となる事業はBtoBのバーティカルSaaSなので、BtoCの知名度が低いことに悩んでいます。

不動産業における諸業務の効率化を実現する【ITANDI BB+】に属する各プロダクト(内見予約くん/申込受付くん/電子契約くん等)のUIのほとんどは、実のところ多くの入居希望者の目に触れているんです。「あなたが今使っているそのシステム、イタンジが提供しているんですよ」ということを知ってもらいたいと思っています。


 

インタビューを終えて

Growwwth Note発刊から2年を経て、サクセスボイスでも多くのカスタマーサクセス領域で活躍するビジネスマンと出会ってきましたが、やはり経営メンバーとして奮闘する方へのインタビューはひとあじ違うものでした。アツいこと、仕事が出来ること、クレバーであることは当たり前の前提条件として備えておられ、その上で業界刷新/事業成長の「最短距離」を行くために何をすべきかを24時間365日考えておらえれることがひしひしと感じられました。またそれを実現するアイディアを考案し、ご自身で率先垂範しつつ、チームメンバーとともに実現まで持って来られていることも、具体性に富んだ数々の言葉から読み取ることができました。自身が生活する上でも欠かせない領域である「不動産業界」全体のDXを、この方ならば実現されるであろうと確信したインタビューとなりました。

長谷川さん、ありがとうございました!


※インタビュー実施日:2023年6月26日
 2023年10月1日時点で確認された情報を掲載


▷▷前回分の第8弾はこちら!
【サクセスボイス Vol.8】関わる人は"全員カスタマー"。スキルとホスピタリティの両立で事業成長の加速にコミットするスーパーCSM



渡邉 剛

執筆者情報:

渡邉 剛(わたなべ ごう)

ユニリタ自社開発のETLツール「Waha! Transformer」の導入教育/サポート、データ活用システム(ETL/DWH/BI)構築のプロジェクトマネージャーを歴任し、2018年にカスタマーサクセスチームの立上げ責任者を担当。
その経験からカスタマーサクセス専用ツールの必要性を実感し「Growwwing」の事業立上げをおこなう。
2020年7月の事業化からプロダクトマーケティングとカスタマーサクセスの責任者を担当。
カスタマーサクセスコミュニティ「CS KOMMONS」においてハイタッチ部 副部長も歴任。


『Growwwing 』サービス資料を無料でダウンロード

『Growwwing 』サービス資料を無料でダウンロード

LTV最大化のためのカスタマーサクセスプラットフォーム『Growwwing グローウィング』のサービス資料を無料でダウンロードいただけます。
『Growwwing グローウィング 』は、解約防止とネガティブチャーンを達成する顧客管理が実現。Salesforceとの相性は全ツールNo.1です。



  • LINEで送る
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連キーワード

お役立ち情報

“取材・記事掲載
無料キャンペーン”中

“貴社のカスタマーサクセス実践体験を無料でPRしてみませんか?
これからカスタマーサクセスを始める方へのヒントになり、
勇気を与える貴社の物語を聞かせてください”