<サクセスボイス 番外編>カスタマーサクセスのトップランナーからみた、カスタマーサクセスの現状と未来
カスタマーサクセス市場全体の活性化を目指すべく「カスタマーサクセスカレッジ」を立ち上げ、現在も代表をつとめる丸田絃心氏と、自身の実体験から得た知識と気づきに基づいてカスタマーサクセスプラットフォーム「Growwwing」を開発した尾上雄馬氏。業界の最前線をひた走る二人が、実体験をもとに日本のSaasサブスクリプション市場におけるカスタマーサクセスの現状と今後についてお話しします。
*今回の記事は、Growwwingが2021年12月7日に開催したセミナーを文章化したものになります。
データから見るカスタマーサクセスの現状
司会 宇部(以下、宇部):ユニリタでは会社員3万名、SaaS/サブスクリプション事業関係者300名を対象に、「カスタマーサクセス実態調査2021」を実施しました。調査結果によると、市場における消費活動の変化にともないBtoB、BtoCともにSaaS/サブスクリプション事業に取り組む企業は増加の兆しにあり、今後数年で1.5倍まで増える兆しとなっています。また、SaaS/サブスクリプション関連の製品・サービスの提供状況は、BtoCよりもBtoBでの割合がやや高くなっていることが明らかになっています。
一般市場におけるLTVとカスタマーサクセスの認知度に関しても、2020年のデータと比較すると大きく上昇しています。他社のカスタマーサクセス調査にはなりますが、カスタマーサクセスについて知っていると回答した方が2020年は15.9%だったのに対し、2021年の調査では35%にまで伸びています。
カスタマーサクセスに取り組む企業は増加傾向
丸田絃心(以下、丸田):データに表れているとおり、カスタマーサクセスが市場全体に広がっているのはすごく感じています。そのなかで、大きく2つの動きがあると思います。1つ目はカスタマーサクセスを組み込んで事業の立ち上げを加速させる動きがあること。そして2つ目は、すでに取り組まれている企業は戦略・組織ともにレベルアップしてきているように感じます。たとえば、オンボーディングや基礎の部分は完成しており、そこからさらに一段二段上のところで課題解決に取り組まれているように感じます。
尾上雄馬(以下、尾上):従来はモノ売り(売り切り型ビジネス)中心で、カスタマーサクセスとは無縁だった企業も、SaaS/サブスクリプション関連事業へ参入するとともに、徐々に取り組み始めています。この動きについて考えられる要因は2つあります。1つはDX化の流れのなかで、お客様のデータが取れるようになってきたことです。2つ目は、日本の市場全体が縮小し、新しい収益源を模索するなかで、既存のお客様とのつながりを強化していく方法としてカスタマーサクセスにたどり着くケースがあります。
CS担当者が感じるカスタマーサクセスのリアルな課題
宇部:カスタマーサクセスに取り組む企業が増えてきているなかで、課題に直面する企業も少なくないと思われます。
現場視点で見るカスタマーサクセスの課題
尾上:従来とは異なる新たな事業においてカスタマーサクセスに取り組む場合、ビジネスモデルの違いが一つの問題となります。たとえば、売り切りの製品やサービスなどのビジネスモデルでは、プロダクトを売った後に必要となるアフターケア全般はコストと見るのが当然です。一方で、SaaS/サブスクリプションはサービスを売った後から収益が積み重なっていくため、考え方にも異なる部分がでてきます。管理会計においても売り切りのビジネスで一番重視されるのは損益の部分であるのに対し、サブスクリプションなどで新規事業を行う場合は成長率のほうが重要になってくるわけです。このように、売り切り型とSaaS/サブスクリプション型では管理会計の仕組みが変わってくるのが、大きな課題だと感じます。
もう一つの課題が、業務の属人化です。CS立ち上げ当初は当然ながら、ガイドライン等は整備されていませんし、お客様自身が何に課題を抱えているのかがわからないというケースも多く、属人的に動かざるを得ないところがあります。属人化をいかに標準化して誰でもできるようにしていくかは、一つの大きなポイントです。
管理職としては、並行して現場のプロセス管理も行っていく必要があります。ヘルススコア等の数値管理も大事ですが、付随してタスクの抜け漏れがないように基本的な業務の管理も重要になってきます。
コンサルの視点で見るカスタマーサクセスの課題
丸田:スタートアップ企業や大企業などいろんな企業のコンサルティングを行うなかで、共通の課題として出てくるのが、尾上さんも挙げられていた属人化の問題です。どのようにCS支援におけるロールモデルからベストプラクティスを作り、誰でもできるように落とし込んでいくのかを相談されることはすごく多いです。
そして、採用と育成も大きな課題です。採用については長年言われていることであり、ほぼすべての企業が取り組んでいると思います。そしてカスタマーサクセス(CS)業界において、今特に大きな課題となっているのが、採用後の育成です。体系的な育成のプロセスなく、OJTで現場を見て学んでくれるだろう、あるいは優秀な人材を採れば頑張ってくれるだろうと考えている傾向が強くあります。CSとして成果をだすために必要な能力を示し、お客様にプロダクトを使ってもらうための具体的なトレーニングを設けて、明確な育成のプロセスを社内に作っていくことは大きなミッションです。
それから、戦略の見直しも課題となっています。多くの企業はカスタマージャーニーを描いてプレイブックを作り、ヘルススコアも設計して、きちんと優先度をつけてお客様の支援ができていると思います。ただ、プロダクトが進化してお客さんも増えていき、新しい事象が増えていくなかで、型通りにいかないことも出てきます。進化に合わせて細分化していく必要があるわけですが、より成果を出していくためにどのように戦略を見直してアップデートしていくかは企業が悩んでいるポイントのひとつだと感じます。
今後のカスタマーサクセスについて
宇部:「カスタマーサクセス実態調査2021」では、カスタマーサクセス活動に関するアンケートを実施しています。その中から、回答に特徴的な傾向が出ている設問を4つピックアップしました。
□重要視するタッチモデルに関する設問
・ハイタッチアプローチが重要と考えている:61%
□重要視するカスタマーサクセス周辺のKPI/KGIに関する設問
・最も採用されている評価指標は解約率である:45%
□活動において使用しているツールに関する設問
・Excel・スプレッドシートを活用している:39%
□カスタマーサクセス専門ツールに求める機能に関する設問
・求める機能はCRMである:59%
以上4つの回答をもとに、議論をお願いします。
適切なタッチの組み合わせが求められる
□重要視するタッチモデルに関する設問
・ハイタッチアプローチが重要と考えている:61%
尾上:ハイタッチのアプローチが重要だと考えている方は61%に上るというデータが出ていますが、これは実際に現場でも感じるところです。一方で、今後はテックタッチも広まっていくと思います。ただ、テックタッチの広まりにともない、ハイタッチがなくなる、ということはないと思います。とくにBtoBの領域で市場を絞ると、どうしてもお客様の数も絞られてきます。そのなかで、お客様とのリレーションを築いておくことが重要になってくるのは、変わらないと思います。ただ、スケールしていったときにすべてのお客さんに対してうまくアプローチするために、テックタッチでの補完も必要になってくると感じています。
丸田:どのお客さんに対してどのタッチをどう組み合わせていくかが、すごく大事になると思います。また、海外ではハイタッチアプローチを有償化していくという動きが結構あり、どう切りわけて型化していくかも今後ポイントになると思います。
顧客のサクセスも指標として大事になる
□重要視するカスタマーサクセス周辺のKPI/KGIに関する設問
・最も採用されている評価指標は解約率である:45%
丸田:解約率に関しては、改善に向けたアプローチがある程度型化されてきて、一定の認知もされてきている状態です。ただ、解約率にはある程度天井があり「0」に近づいてくると、それ以上改善のしようがありません。今後は、海外でも言われているように、解約率の次にある顧客のサクセスが指標として見られてくると思います。
管理から成果が求められる流れへ
□活動において使用しているツールに関する設問
・Excel・スプレッドシートを活用している:39%
丸田:会社にもよりますが、カスタマーサクセスの活動は多岐に渡り、顧客に関する情報量も膨大になりがちです。そういう意味ではスプレッドシートを使うのはメリット・デメリットがはっきりしているのかなと思います。メリットというのは、カスタマイズ性ですね。「こういう情報をこういう風に管理したい」と思った時に、それを早く簡単に自由に組み上げることができるのは大きな利点です。管理する情報や管理方法のイメージがまだ持てない時のトライ&エラーにも使えるでしょう。一方で、カスタマーサクセスにおける管理すべき情報や管理方法がある程度型化されてきている中で、それを一から考えないといけないというのは車輪の再発明的な無駄もあります。よほど熟練のカスタマーサクセス人材がいて、自社に合わせた最適な管理方法をフルカスタマイズで構築したいというなら話は別ですが。多くの会社の場合ある程度カスタマーサクセスの一般的な型を当てはめられると思いますので、それが実装されたカスタマーサクセス専用ツールを使ってしまった方が早いという側面もあるかもしれません。また、顧客情報を貯める・見るだけではなく、顧客情報やCRMツールを使い倒して様々なツールと連携したり、アクションを自動化したりしてエクスパンションやチャーン防止という成果に繋げていくのも大事です。その点でもカスタマーサクセスがスプレッドシートだけでやっていくのは、どこかで限界を迎えるのではないでしょうか。
専門ツールの導入で適切な管理を実現
□カスタマーサクセス専門ツールに求める機能に関する設問
・(カスタマーサクセスの)専門ツールに求めるも機能のはCRMである:59%
尾上:多くの方がカスタマーサクセスの専門ツールにCRMの機能を求める背景としては、CS活動を行うにあたって重要となる販売前から販売後、解約に至るまでのお客様とのつながりや担当者の変遷を一貫して管理できるようになることが挙げられます。適切な管理ができるようになることで失敗の原因まで管理できるようになり、どのお客様が「理想的な顧客」だったのかもわかるようになってきます。またそういったフィードバックをマーケティング/セールス側にまた返していけるようになるため、CRMが求められていると思います。
(カスタマーサクセス専門ツールの)CRM機能による顧客管理/プロセス管理は、一番最初の段階から行うのが良いと思います。途中から専門ツールを導入するとなると情報を掘り起こして整理していく必要があり、非常に手間がかかります。最初からツールを使えば、楽にスピーディーに管理が行え、丸田さんのおっしゃる成果をもとめることも現実的になってきます。
カスタマーサクセスの重要性は今後も高まっていく
尾上:2025年の壁の問題もあり、エンタープライズ企業も積極的にDXに取り組んでいます。現在スタートアップでCSに取り組んでいるのに加えて、今後エンタープライズ側でもデータが取れるようになってきたことでCXを考えなければいけないとという理由で、CSに取り組みはじめたところは増えてくると思います。そう考えると、既存の顧客をいかに守っていくかが、非常に大事になります。カスタマーサクセスは今事業をやられてる方にとっても非常に大事ですし、今後事業を始められる方に関しても今すぐ取り組んでいくべきものだと思います。
宇部:CSのプロならではの積極的かつ具体的な議論、誠にありがとうございました。SaaS/サブスクリプション市場の浸透にともない、カスタマーサクセス活動に取り組む企業が増えていること、またそれと比例して、活動上/管理上の問題を多く抱えはじめる企業も増えていることがよくわかりました。Growwwingでは、継続的にこのような経験者による意見やノウハウを皆様にお伝えする機会を作っていきたいと考えています。引き続きよろしくお願い申し上げます。
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