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【実践編】失敗しないカスタマーマーケティング!よくある落とし穴と回避方法

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【実践編】失敗しないカスタマーマーケティング!よくある落とし穴と回避方法

カスタマーマーケティングは、既存顧客の価値を最大化し、解約率の低下やアップセル・クロスセルの創出に大きく貢献する取り組みです。しかし、「良い施策を打てば自然と成果につながる」という誤解からスタートしてしまい、かえって失敗を招くケースも少なくありません。既存顧客領域は、単に情報を届けるだけでは行動につながらず、顧客理解・タイミング・プロセス設計・組織連携など、多くの要素が絡み合うためです。

本記事では、実際のCS担当者・マーケティング担当者・営業組織が直面しがちな典型的な失敗パターンを整理しながら、失敗しないための考え方と具体的な運用ポイントをご紹介します。基礎編だけでは見えにくかった“実務上のリアル”を踏まえ、明日から運用に活かせる視点をお届けします。







まずはおさらいカスタマーマーケティングとは


カスタマーマーケティングとは、既存顧客に対して継続利用や活用促進、ロイヤル化、アップセル・クロスセルを促すための取り組み全般を指します。近年、この領域が注目を集めている理由のひとつに、ビジネスモデルのサブスクリプション化があります。多くのSaaS企業やサービス提供企業では、新規契約よりも「契約後の継続」と「顧客による価値の最大化」が収益の中心となりつつあります。

カスタマーマーケティングでは、顧客がプロダクトやサービスを導入した後の体験をより良くするために、オンボーディング支援、利用データを活用した活用促進、コミュニティ運営、個別の成功事例紹介、デジタルチャネルを使った情報提供など、さまざまなアプローチが用いられます。重要なのは、企業都合のアプローチではなく、「顧客の成功を促す」という視点で施策を設計することです。

また、カスタマーマーケティングはカスタマーサクセスと密接に関連しており、その一部として位置づけられることもあります。カスタマーサクセスが“顧客の成功状態”を広く管理する役割を担う一方、カスタマーマーケティングは、特にデジタルチャネルを活用しながら、顧客に必要な価値をタイミングよく届ける役割を持っています。

顧客の状態や利用状況、成熟度に応じて最適な情報を提供し、長期的な関係性を築いていくことが、カスタマーマーケティングの本質です。以下の章では基礎編の内容を踏まえつつ、実務で起こりがちな失敗や落とし穴を避けるための具体的なポイントを深く掘り下げていきます。


基礎編の記事はこちら▶【基礎編】今注目のカスタマーマーケティングとは?カスタマーサクセスとの違いや具体的施策を解説



失敗例1:ペルソナに頼りすぎて実態と乖離が生まれる

最も多く見られる失敗が、仮説上の顧客像(ペルソナ)だけを基準に施策を進めてしまうというものです。SaaS/サブスクリプション型サービスでは、初期に作成したペルソナをそのまま利用し続け、実際の利用状況やニーズの変化を反映しないままコンテンツを配信し続けてしまうことがあります。

 

例えば、オンボーディング直後のユーザーに高度な活用事例ばかり紹介すると、情報過多によって逆効果になります。また、利用が停滞している顧客に対して、活用促進メールを一方的に送り続けると、心理的な距離が広がり、かえって解約の判断を早めてしまうこともあります。

 

顧客理解が不十分な場合、施策はどうしても「企業が伝えたいこと」中心になります。これを避けるためには、顧客の現在地を把握する仕組みが欠かせません。ログイン率や主要機能の利用頻度、問い合わせ履歴、商談履歴など、複合的なデータを活用することで、フェーズ(オンボーディング/定着/活用/成果創出)ごとに必要な情報を最適化できます。

 

失敗を防ぐポイントは、「ペルソナを固定しない」「行動データに基づき施策を調整する」「フェーズごとに情報を出し分ける」という3点に集約されます。




失敗例2:施策を詰め込みすぎると顧客と運用が疲弊する


カスタマーマーケティングでは、実施できる施策が非常に多いことが特徴です。メール、アプリ内通知、ウェビナー、コンテンツ配信、ユーザーコミュニティ、導入支援、勉強会、アップセル提案など、多彩な手段があります。

 

しかし、この多様さが落とし穴にもなります。よくあるのが、「できることを全部やる」という考え方です。複数の部署がそれぞれに施策を開始し、顧客へ毎週のようにメールや案内が届く状態になると、顧客は情報過多となり、重要な案内も埋もれてしまいます。さらに、運用側も施策が増え過ぎると管理しきれず、継続不可能な状態に陥ります。

 

この失敗を避けるためには、施策を“引き算で設計する”視点が欠かせません。顧客にとって「今必要な情報は何か」「行動につながるのはどれか」を判断軸に、施策を整理する必要があります。また、年間の施策ロードマップを作り、顧客にとって過度なコミュニケーション量にならないよう調整することが重要です。特にSaaS/サブスクリプション型サービスでは、運用負荷の高さが施策の継続性を左右します。引き算の視点で設計することが、結果として成功への近道になります。

 



失敗例3:テックタッチだけに依存して課題を見落とす

近年よく見られる誤解が、「自動化=効率化=成果向上」という考え方です。確かに、自動メール配信やアプリ内通知、ヘルススコア連動のアラートは有効であり、顧客に最適なタイミングで価値を届けることに貢献します。しかし、テックタッチだけに依存すると、重要顧客の深い課題を見逃すリスクが高まります。

例えば、利用が停滞している顧客に自動メールだけを送り続けても、なぜ停滞しているのかという核心的な理由を把握することはできません。担当者変更や社内稟議の停滞など、データに表れにくい要因が存在するためです。

テックタッチの役割は“検知”であり、“理解”や“対話”の代替ではありません。そのため、テックタッチとハイタッチの補完関係を明確にし、「どの兆候が出たら人が動くか」を定義することが必要です。自動化は強力な武器ですが、万能ではありません。役割分担を適切に行うことで、大きな成果につながります。

 



失敗例4:KPIの作り方を誤って数字が役に立たない

カスタマーマーケティングの効果を測定するために、多くの企業がKPIを設定します。しかし、ここにも典型的な失敗パターンがあります。

例えば、

・KPIが多すぎて現場が追い切れない
・行動指標ばかりで成果指標がない
・部門ごとにKPIがバラバラ
・セグメントごとの違いを無視して統一してしまう

といったケースです。

メール開封率が高くても、活用が進んでいなければ意味がありません。逆に、ヘルススコアが改善していても、アップセルや継続更新につながらなければ、カスタマーマーケティングの目的は達成できません。

失敗を避けるためには、「行動(Action)」「成果(Outcome)」「価値(Value)」の3階層でKPIを設計することが効果的です。また、顧客セグメントごとにKPIを変え、ハイタッチ顧客とテックタッチ顧客を同列で評価しない仕組みが必要です。数字を追うことが目的ではなく、価値提供の最大化に向けて数字を“使う”姿勢が求められます。




失敗例5:CS・営業・マーケが連携できず顧客体験が分断される


カスタマーマーケティングは組織横断で取り組むべき領域ですが、多くの企業ではマーケティングは「新規リード」、営業は「商談」、CSは「更新・活用支援」と、役割が縦割りになっているケースが多く見られます。その結果、既存顧客の情報が組織内で分断された状態になってしまいます。

顧客からすれば、複数部署から似た内容の案内が届いたり、担当者が変わるたびに同じ説明を求められたりと、手間と時間がかかり信頼度の低下につながります。一方、企業側でも「誰がどの顧客にどの価値を届けているか」が見えづらくなり、アップセルや継続更新の機会を逃すことになります。

この失敗を防ぐには、「顧客の体験を基準にした組織連携の仕組みづくり」が欠かせません。ジャーニーを軸に情報共有と施策設計を行い、点のアプローチから線のアプローチへとつなげることで、顧客体験は大きく改善します。





失敗例6:成功事例を表面だけ真似して成果が再現できない

成功事例の活用は重要ですが、表面的に真似るだけでは成果は再現できません。

例えば、他社で「ウェビナーが成功した」という事例があっても、自社顧客の成熟度やニーズ、プロダクト特性が異なれば、同じように成功するとは限りません。成功事例の本質は、“どの顧客群に、どのタイミングで、どんな価値が刺さったのか”を読み解くことにあります。

そのうえで、自社のジャーニーに合わせてローカライズする姿勢が大切です。成功事例は“型”ではなく“洞察”として活用することが、失敗を避けるポイントになります。




まとめ

本記事では、カスタマーマーケティングでよく見られる失敗のパターンを整理しながら、実務で成果を出すための重要なポイントをご紹介しました。どの失敗も、施策自体が悪いわけではなく、顧客理解の不足や運用の設計ミス、組織連携の欠如といった“根本的な要因”から生じています。

カスタマーマーケティングは、新規獲得よりも顧客と長い時間をかけて取り組む活動です。そのため、短期的な成果だけに捉われず、顧客の成功体験を積み重ねる視点が欠かせません。施策の数を増やすよりも、顧客の現在のフェーズや状態に合わせて、最適な価値を丁寧に届ける姿勢が、結果的に継続率やアップセル率の向上につながります。

また、テックタッチや自動化は非常に有効な手段ですが、それだけで顧客を深く理解することはできません。デジタルと人の支援を組み合わせることで、顧客が抱える課題の本質にたどり着けるようになります。KPI設計や部門間連携も含め、顧客が一貫した価値を受け取れる体制を整えることが、カスタマーマーケティングの成功を支える大きな要素です。

最後に、成功事例はあくまで“参考情報”であり、そのまま再現しても成果が出るわけではありません。自社の顧客特性やプロダクト、提供価値に合わせてカスタマイズすることが何より重要です。

カスタマーマーケティングは、顧客を中心に置き、必要な価値を過不足なく届ける活動です。この記事の内容が、皆さまの取り組みをより効果的にし、長期的な顧客関係の構築とLTV最大化に向けた一歩となれば幸いです。




佐々木 一稀

執筆者情報:

佐々木 一稀(ささき かずき)

ユニリタ自社開発のフローチャートツール「Ranabase」にて開発に携わり、カスタマーサポートを担当し2022年に「Growwwing」チームへジョイン。
カスタマーサクセスメンバーとしてオンボーディング支援業務を経験し、現在ではその知見を活かし顧客の求めてる情報を発信するためにマーケティング分野を担当。

幅広い経験からの視点を生かし、カスタマーサクセスを行う方へのヒントとなるような記事を掲載できるよう全力で頑張ります。

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