【応用編】タッチモデルの適正運用で、カスタマーサクセス活動を最適化、LTVの最大化を実現!

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カスタマーサクセスにおけるタッチモデルは、顧客をLTVやポテンシャル、またはロイヤルティなどでセグメントし、アプローチを変える手法です。CS組織のフェーズに合わせ、タッチモデルを正しく運用することが大切です。ハイタッチから始めて、徐々にロータッチやテックタッチを追加していきましょう。

 

目次



顧客をセグメントにわけて、アプローチ手法を変えて運用していくタッチモデルは、SaaSのカスタマーサクセス活動を効率化するうえで欠かせない考え方です。

しかし、CS組織を立ち上げたものの、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの使い分けがうまくいかず、社内のリソースを最適化できていない企業が多いのではないでしょうか。

 

また、顧客セグメントに関わらず、CS組織の余力が乏しかったり、ロータッチやテックタッチの導入に時間とコストをかけることのできないサービスの立ち上げ初期は、ハイタッチに力点を置き、徐々にロータッチやテックタッチを追加していくのがカスタマーサクセス活動の基本的な流れです。

 

ハイタッチは人の手でおこなうため「属人化」という課題が発生しがちです。成功の「型」を探し、それを組織全体に反映させ、ミスや工数削減、ひいては顧客満足の向上に資するように取り組みましょう。

 

本記事では、タッチモデルをCS組織のフェーズごとに運用し、カスタマーサクセス活動を最適化する手法をわかりやすく解説していきます。

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ハイタッチから始め、型化を進めて適切なタッチモデルを追加していく

 

カスタマーサクセスとは?」の記事にて、タッチモデルの基本的な説明や活用方法を説明しました。

今回の応用編では、CS組織のフェーズごとに押さえておきたいタッチモデルの運用方法を紹介します。

 

タッチモデルは顧客をLTVやポテンシャル、またはロイヤルティなどでセグメントし、アプローチを最適化する手法を指します。

 

タッチモデルを運用する目的は、顧客満足度を高め、自社の製品やサービスを長く利用してくれる顧客を増やすことだけではありません。

顧客対応における人的工数上の無駄を省き、カスタマーサクセス組織と活動を最適化するのもタッチモデルの大切な目的のひとつです。

 

タッチモデルを採用する場合は、CS組織のフェーズに合わせて運用方法を変えていく必要があります。

 

たとえば、CS組織を立ち上げたばかりの時期は、CSメンバーが1~3人と少人数のケースも多く、利用可能なリソースは限られています。

よくある失敗例が、いきなりハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3つのアプローチを同じ粒度と割合で実施しようとするケースです。

 

CS組織のメンバーが少ない立ち上げ初期は、すべての顧客層に手厚く対応するための余力がありません。

 

まずはタッチモデルの優先順位を明確にし、LTVが高いもしくは将来的な期待値が高い顧客に対してのみ、ハイタッチを中心に適用していくのがベストです。

その後、CS組織の拡大に合わせながら、ロータッチ、テックタッチを追加していきましょう。

 

よく「カスタマーサクセス活動はハイタッチから始まる」といわれるのも、CS組織の初期は、概ねハイタッチでの活動に終始せざるを得ず、またそれが、将来的にロータッチ、テックタッチを導入するための、よき準備期間になるためです。1対1のハイタッチでうまくいったケースをロータッチに適用していったり、ハイタッチで実行し「人が説明するほどでもない」「文章や動画を見てもらうほうが理解が進むな」という気付きのあった活動については、テックタッチに移行していく、といった具合です。



顧客ごとのケーススタディを集める

CS組織の立ち上げ初期にやっておきたいのが、顧客ごとのケーススタディを集めることです。

前述のとおり、CS組織の立ち上げ初期は、少ないメンバーでやりくりしながら効率的にタッチモデルを運用していくという課題を抱えています。

 

しかし、CS組織を立ち上げたばかりの時期は、カスタマーサクセス活動の知見やノウハウが足りていません。

 

CS組織の立ち上げ初期のよくある課題は以下のとおりです。

 

 ・そもそもカスタマーサクセス活動の知見やノウハウがない
 ・顧客のデータを一元管理するシステムがない
 ・顧客対応のノウハウを水平展開する文化がない
 ・顧客対応の分析や振り返りをする機会がない
 ・顧客対応のゴールや優先順位が共有されていない
 ・上記の課題を解決するためのシステム開発のリソースがない

 

タッチモデルの中でも、LTVが高い顧客を対象としたハイタッチは、SaaSの売り上げや利益に大きく影響します。

しかし、ハイタッチは大口顧客との1on1での対応がメインとなるため、顧客対応のノウハウがCS組織内で共有されにくく、属人化しやすいという欠点も抱えています。

 

今後、CS組織をスケールしていくことを考えると、カスタマーサクセス活動の再現性がないのはリスクが高い状況です。

 

まずはハイタッチをメインとした顧客の利用状況や、顧客対応の事例などをデータに残し、可視化された情報を元にケーススタディを実施しましょう。

顧客対応の分析や振り返りの機会を増やし、カスタマーサクセス活動のノウハウを水平展開するのが狙いです。

 

CS組織の立ち上げ初期は、ハイタッチに注力する機会が多いこともあり、属人化のリスクも高くなっています。

カスタマーサクセス活動の可視化と、ケーススタディによる分析・振り返りの2点を意識し、ハイタッチの属人化から脱却しましょう。



成功の型を導き出す

次に大切なのが、ハイタッチを中心とした顧客対応の成功の型を探し、カスタマーサクセス活動の「型化」を進めることです。

ケーススタディを繰り返すことで、「今回の対応のどこが良かったか」「なにが悪かったか」などの知見が蓄積されていきます。

 

うまくいったハイタッチの活動事例を分析し、コンピテンシー(行動特性)を言語化することで、カスタマーサクセスを成功に導く方程式を手に入れることができます。

カスタマーサクセスの成功の型をCS組織で共有すれば、ハイタッチ対応の属人化リスクも減らせます。

 

まずは、ハイタッチ対応からスタートし、カスタマーサクセス活動の「型化」を進めながら、タッチモデルを適切に運用していくのことが、CS組織立ち上げ初期のポイントです。



タッチモデルを最適に活用し、組織をスケールする


事業を拡大していくなかで、CS組織のスケールに合わせてタッチモデルを最適に活用する必要があります。

タッチモデルの種類や、ロータッチ、テックタッチに移行するための施策を紹介します。



タッチモデルの種類について

繰り返しになりますが、カスタマーサクセス活動で使われるタッチモデルには、ハイタッチのほかにも、ロータッチやテックタッチなどの種類があります。

CS組織の立ち上げが完了し、メンバーの規模が4~10人に増えたり、チーム単位での活動が可能になれば、タッチモデルの運用に余力が生まれます。

 

ハイタッチをメインにしつつ、徐々にロータッチやテックタッチにも挑戦し、カスタマーサクセス活動のスケールを拡大していきましょう。

 

手法

特徴

施策

ハイタッチ

もっともLTVやポテンシャルが高く、SaaSの売り上げに大きく貢献する顧客層へのアプローチ

1on1での丁寧な個別対応が基本

ロータッチ

ハイタッチほどではないが、LTVが高いミドルクラスの顧客層へのアプローチ

1対複数での対応が基本

テックタッチ

もっともLTVが低く、人数が多い顧客層一般消費者へのアプローチ

テクノロジー対多での自動的/効率的なアプローチが基本



テックタッチ:セルフサービスコンテンツの充実化

CS組織をスケールしていく時期に取り組みたい施策が、セルフサービスコンテンツの充実化です。

SaaSにおけるセルフサービスコンテンツとは、チュートリアル、オートデモ、動画マニュアル、FAQ、操作ガイド、プラクティスなど、顧客が自発的に学べるコンテンツを指します。

 

セルフサービスコンテンツを充実化すれば、1対複数のアプローチが基本のロータッチや、1対多のアプローチが前提となるテックタッチを効率化できます。

さらに、セルフサービスコンテンツをWebで提供すれば、顧客が自分で疑問や悩みを解決するようになります。

 

結果、対応コストをほとんどかけずに、ロータッチやテックタッチの実現が可能です。

 

これらの理由から、セルフサービスコンテンツの充実化は、CS組織の立ち上げ初期から拡大期にかけてのフェーズに推奨されています。

セルフサービスコンテンツを設計する際は、「顧客の疑問や悩みを先回りして解決できるかどうか」を意識しましょう。



ロー、テックタッチに移行できる業務を探す

セルフサービスコンテンツの充実化と合わせて、ロータッチやテックタッチに移行できる業務を探しましょう。

 

たとえば、LTVが高い顧客向けに行ってきた施策を分析し、導入支援(オンボーディング)をパッケージ化するケースが挙げられます。

ロータッチやテックタッチの段階では、ハイタッチほどのLTVが期待できないため、顧客対応の効率化や工数削減が目的となります。

 

いきなり全タッチに移行するのではなく、まずFAQやチュートリアルなどのセルフサービスコンテンツの充実化(テックタッチ)、次にセミナーやウェビナーの充実化(ロータッチ)など、タスクを分けて段階的に移行することが大切です。



自助や互助からコミュニティタッチが生まれる

コミュニティタッチはユーザー同士のつながりを通じ、ポジティブな相乗効果を生み出す施策を意味します。

コミュニティタッチの代表例が、ユーザーが参加するオンラインコミュニティです。

 

ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3つと違い、コミュニティタッチはLTVが基準となったタッチモデルではありません。

ロータッチやテックタッチを実践し、ユーザー同士のつながりが生まれるにつれて、自然と醸成されていくのがコミュニティタッチです。

 

コミュニティタッチを生み出すには、一方通行ではなく双方向のコミュニケーションを心がけ、自助や互助の関係を作り出す必要があります。




CS組織の成熟度に応じてタッチモデル判定は自動化へ 


CS組織が成熟するにつれて、全タッチでのアプローチが基本となります。

CS組織の業務量が急増するため、タッチモデル判定を自動化し、カスタマーサクセス活動の工数削減に取り組む必要があります。

 

 

タッチモデルを分ける基準を明確に

まず、タッチモデルを分ける基準を改めて見直しましょう。

CS組織の成熟度が高まれば、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチの3つのタッチモデルに加えて、コミュニティタッチを実践する機会も増えてきます。

 

製品やサービスごとにタッチモデルを区分し、使い分けを明確化することが大切です。

CS組織の規模によっては、タッチモデルごとにチームを分け、分業体制を採用する場合もあります。



顧客データを一元管理し、自動判定

CS組織が大きくなったら、顧客の反応やヘルススコアを可視化し、データを一元管理する仕組みが必要です。

顧客のデータを一元管理することが可能になれば、データに基づいて最適なタッチモデルを自動判定することも可能です。

 

カスタマーサクセスの実現に向けて、社内のあらゆるデータを一元管理するためのプラットフォームが必要になります。



まとめ

タッチモデルは、CS組織のフェーズに合わせて柔軟に運用する必要があります。

CS組織の立ち上げ後はハイタッチに注力し、徐々にロータッチやテックタッチを導入していきましょう。

 

いきなり全タッチの顧客対応を行っても、カスタマーサクセス活動の効率化にはつながりません。

複数のタッチモデルをバランスよく運用することで、効率的な顧客対応を実現し、結果としてLTVの最大化につながります。



尾上 雄馬

執筆者情報:

尾上 雄馬(おのうえ ゆうま)

2007年に株式会社ビーエスピー(現ユニリタ)入社。
ITサービス向けヘルプデスクSaaS「LMIS」を新規開発から開発を担当。
開発業務の傍らサポートも兼務していたが、解約率の高まりに危機感を感じ、2017年より同サービスのカスタマーサクセスチームを立ち上げ責任者を担当。
カスタマーサクセス管理用のツールを内製し、解約率半減を実現。
この管理ツールを汎用化し、Salesforce上で稼働するカスタマーサクセス管理SaaS「Growwwing」として販売開始、2020年7月より事業化し責任者を担当。
itSMF JapanにおいてクラウドSLA分科会副座長、サービスカタログ分科会座長も歴任。


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