【基礎編】脱属人化!カスタマーサクセス業務における自動化するべき業務とそのポイント

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本記事では、ビジネスにおいてますます注目される「ロイヤルカスタマー」の定義から、その重要性、見極め方、育成手法、さらには戦略運用上の注意点まで、基礎的な視点から体系的に解説します。売上への直接的な貢献のみならず、企業の持続的成長やブランド価値向上において欠かせないロイヤルカスタマー。顧客との関係性を深め、信頼と共創の基盤を築くために、まずはその本質を理解することから始めてみませんか。



目次





カスタマーサクセスにおける「脱属人化」と自動化の重要性


サブスクリプション型のビジネスでは、同じ品質の価値提供を継続しなければすぐに解約されてしまいます。担当者の経験や勘に頼る運用は、属人化が進むほど再現性を失い、顧客体験のばらつきやナレッジの断絶を招きます。脱属人化の第一歩は業務を可視化し標準化することで落とし込むことです。第二歩は型化した業務をシステムに任せて自動化させることです。自動化は人を置き換えるためではなく人が本来向き合うべき業務、つまり顧客理解の深化、関係構築、価値仮説の検証などに時間を取り割り当てるための投資です。さらに自動化は測定可能なログを残すため、改善の起点が明確になり、KPIへの影響を追跡できます。同じ人数でより多くの顧客に、同じ質でよりタイムリーな働きかけが可能になります。

また自動化の価値は、担当者の入れ替わりの際に発揮されます。新任のCSM(customer success manager)が着任しても、同じトリガーで同じプレイブックが動き、再現性の高い業務を生成出来ます。逆に属人化が進んだ現場では、引き継ぎ資料の網羅性に頼らざるを得ず、タイミングの逸失が続く可能性が高くなります。誰もがおなじ段取りで、同じ品質、同じ速度で対応できる状態こそ、サブスクリプション型ビジネスにおける健全性を守る土台です。さらに、標準化されたログが蓄積されれば、どの施策が成果に直結したかを検証しやすくなります。


まず自動化すべき「反復・ルールベース」領域の見極め

自動化できる業務の候補としては、頻度が高く、判断基準が明確で、入力データが揃っている業務があります。たとえばオンボーディングでは、環境設定の完了、初回ログイン、初期価値の実感といったマイルストーンを時系列で管理し、達成状況に応じて自動で次の案内やチケットを起票します。ヘルススコアでは、利用量や機能理解度、サポート履歴、NPSなどを集計し、しきい値を下回った顧客に自動でリカバリーのプレイブックを提示します。

 

自動化対象の洗い出しでは、まず顧客が「どこで苦戦しているか」を見極めることから始めます。初期設定が進まない、管理者が権限移譲をしていない、キーパーソンが一度もダッシュボードを見ていない、といった点は行動ログやサポート履歴を分析することで発見できます。つまづきの期間が長いほど解約率は上がるため、トリガーを明確化してプロアクティブに対応するほど効果が高まります。




標準化→自動化→最適化の順番を崩さない


きちんと精査を行わずに自動化を行ってしまうと、誤った手順を拡散させるだけになってしまいます。まず現状の業務を可視化し、SLA(Service Level Agreement)や定義を揃え、標準化をおこないましょう。次に計算に必要なデータのルールを決めます。日付や数値のフォーマット、タイムゾーンの統一、欠損時の扱いなど、計算ロジックを定義します。指標やしきい値は、あとから調整できるようにしておくと安全です。最初からすべてを全自動にする必要はありません。入力が必要な所は、テンプレートやUIを調整することで負担を減らし、半自動から始めて段階的に自動化を広げると、失敗が少なく進められます。




ツール選定と実装時のポイント

 

自動化する際は「新しくツールを導入する前に、いま持っているものでどこまでできるか」を起点に考えましょう。すでにCRMやCSプラットフォームなどのツールを使っているのであれば、まずはその中にある自動化機能(ワークフローやスケジュール実行)を最大限活用しましょう。新しいツールを増やすほど運用は複雑になります。トラブル対応に追われてはせっかくの自動化も本末転倒です。

 

テキストの要約や下書きづくり、問い合わせの仕分けには生成AIが役立ちます。ただし、機密情報の扱いと、出力の確認方法を定義してから使用することが重要です。たとえばAIが作った文は必ず人が最終チェックする、出力は保存して後から見返せるようにする、といったルールです。どのツールを選ぶ場合でも、権限のつけ方、個人情報の隠し方、ログの保存期間などは最初に決めておくと、必要に応じて振り返りができるため品質の改善に役立ちます。

 



よくあるつまずきと解決ポイント

自動化がうまくいかない場合、データが足りない可能性が高いです。入力項目が多すぎて埋められない、部署ごとに定義が違う、データが上書きされて履歴が残らないなど、こうした問題を放置すると、苦労して整備した仕組みも正しく動きません。重要な項目を最小限に絞り、いつ誰が入力するのかを決め、入力する意義(その後の支援が早くなる、顧客の成果につながるなど)を見える形で担当者へ伝えることも重要です。

次に、通知が多すぎると見なくなるという傾向があります。自動化の初期段階では小さな範囲で試し、検証をおこないながら、しきい値やルールを都度調整することが大切です。また通知が来た後に「何を、いつまでに、誰がするか」が分かるようにしておくことで、対応が進みやすくなります。

 

また、設計した仕組みも「なぜこの値で通知が出るのか」が分からないと、現場は納得して動くことができません。スコアの内訳や判定の理由、過去の変更履歴を見える状態にしておくことで現場メンバーの認識の誤りを防ぎ、対応品質の担保につながります。完全自動にせず、必要なときに人が介入できる余地(差し戻しや上書きの方法)を残しておくと、安心して使ってもらえます。

 




まとめ

ロイヤルカスタマーの存在は、単なる売上向上の手段ではなく、企業と顧客が「共に成長する関係性」を築くための基盤といえます。現代のビジネスにおいて顧客は、単なる受け手ではなく、発信者であり、開発者であり、伝道者でもあります。このような多面的な関わりをもつロイヤルカスタマーとの関係性を、どのようにデザインしていくかが、企業の持続的成長を左右する重要な要素となるのです。

 

そのためには、単に「買う」ことから「成功する」ことへと視点を転換し、あらゆる接点で信頼と感動を積み重ねていく姿勢が求められます。カスタマーサクセス、コミュニティ運営、パーソナライズされた情報提供など、あらゆる手段を駆使して、顧客のロイヤルティを育み続けることが、最終的には市場における競争優位につながっていきます。

 

ロイヤルカスタマーとは、「偶然」ではなく「設計」によって生まれる存在です。ビジネスの成長を求めるのであれば、今こそロイヤルカスタマーの重要性を改めて見直し、長期的な視点での関係構築が重要です。




佐々木 一稀

執筆者情報:

佐々木 一稀(ささき かずき)

ユニリタ自社開発のフローチャートツール「Ranabase」にて開発に携わり、カスタマーサポートを担当し2022年に「Growwwing」チームへジョイン。
カスタマーサクセスメンバーとしてオンボーディング支援業務を経験し、現在ではその知見を活かし顧客の求めてる情報を発信するためにマーケティング分野を担当。

幅広い経験からの視点を生かし、カスタマーサクセスを行う方へのヒントとなるような記事を掲載できるよう全力で頑張ります。